2月21日はダンロップのゴルフブランド「ゼクシオ」の日。実は毎月21日が「ゼクシオの日」と定められており、ブランド名の英語表記「XXIO」の中の「XXI」がローマ数字で21を意味することに由来します。21世紀に生まれたゼクシオは、最新テクノロジーだけでなく環境への配慮でも21世紀らしい取り組みを進めています。スポーツ用品メーカー各社は今、素材からイベント運営までグリーントランスフォーメーション(GX)と呼ばれる“環境への大転換”に力を入れ始めています。GXとは、化石燃料からクリーンエネルギーへの転換を図ることで経済社会を変革し、持続可能な成長を目指す取り組みのことで、日本政府や企業が一体となって進めている潮流です。ゼクシオを中心に、スポーツ業界で進む最新の環境への挑戦を見てみましょう。素材も地球にやさしく:リサイクル素材とサステナブル製品スポーツ用品の世界では、使われる素材自体をサステナブルなものに変える動きが広がっています。ゼクシオを展開する住友ゴム工業(ダンロップ)は、商品のパッケージに使うプラスチックの大幅削減を宣言。2030年までに包装材のプラスチック使用量を2019年比で40%削減(約半分)する目標を掲げ、具体策として新発売のゴルフボール「XXIO リバウンドドライブ II」の3個入りパッケージでは透明フィルム窓を廃止しました。さらに環境に配慮したFSC認証紙(適切に管理された森林由来の紙)を梱包材に採用し、持続可能なパッケージングを推進しています。こうした取り組みは、小さな箱一つにも「脱プラ」の工夫を凝らし、ユーザーにも環境意識を感じてもらう狙いです。ゼクシオの親会社であるダンロップ(住友ゴム)はゴルフだけでなくテニス用品でもプラスチック削減を加速させています。たとえば、テニスボール缶についているお馴染みのプラスチック製のフタを廃止する決断をしました。実際にテニスの四大大会全豪オープンでは2022年からボール容器にフタがなくなっており、これはダンロップが掲げる「2030年までにスポーツ用品の包装プラを2019年比で半減する計画」の一環です。日本国内でも2023年から順次フタなし&紙ラベルのボール缶に切り替えており、年間約20トンものプラスチック削減につながる見込みです。身近なスポーツ用品のデザインが変わることで、ユーザーにも「これって環境のためなんだ」と気づいてもらえるかもしれません。環境配慮の波は国内メーカーだけでなく世界的なスポーツブランドにも広がっています。たとえばナイキは素材革命に積極的で、現在ナイキ(ジョーダンやコンバースを含む)製品の78%に何らかのリサイクル素材が使われているといいます。不要になったプラスチックボトルから再生したポリエステルをユニフォームやシューズに用いるなど、大量生産ブランドだからこそ循環型素材への転換を加速しています。またアディダスは大胆な目標を掲げ、自社製品に使用するポリエステルを100%再生素材に切り替える計画です。すでにポリエステル素材の96%をリサイクル由来に置き換えたとの報道もあり、来たるべき完全切替えに向け着実に前進中です。こうした海外大手の動きは、日本のスポーツメーカーにも刺激を与えていますし、消費者にとっても「エコな商品を選びたい」という後押しになるでしょう。脱炭素へのチャレンジ:カーボンニュートラルを目指して素材面での工夫と並んで、製造過程や企業活動そのもののカーボンニュートラル化もスポーツ業界の重要テーマです。ゼクシオを手がける住友ゴム工業は2021年に2050年までのカーボンニュートラル(温室効果ガス排出ゼロ)を宣言しました。まず2030年に2017年比でCO2排出量を55%削減し、2050年に製造時排出をゼロにするという具体的な目標を掲げています。達成には再生可能エネルギーの活用や生産設備のイノベーションが不可欠で、実際に住友ゴムは工場での水素エネルギー利用など新技術の実証にも着手しています。ゼクシオのゴルフクラブ製造工場(宮崎県都城市)でも、省エネや廃棄物削減、有機溶剤の排出削減など地道な環境保全活動を継続しており、モノづくりの現場から脱炭素に貢献しています。もちろんこれは一社だけの取り組みではありません。スポーツ用品業界全体で「2050年カーボンニュートラル」は共通のゴールとなりつつあります。ナイキは「Move to Zero」というキャンペーンを掲げ、将来的なCO2排出ゼロと廃棄物ゼロを目指してサプライチェーン全体を見直しています。アシックスやミズノといった国内メーカーも自社工場のエネルギー転換や製品ライフサイクルでのCO2削減目標を定め、国際的な気候変動対策の枠組みに参加する動きを見せています。消費者の側も「このブランドは環境に配慮しているか」を気にするようになっており、環境対応そのものが企業の競争力やブランド価値に直結する時代です。スポーツで競うように、各社が脱炭素へのレースを繰り広げていると言っても過言ではないでしょう。スポーツイベントもグリーンに:大会運営の最新トレンド環境への配慮はスポーツイベントの現場でも大きなテーマになっています。記憶に新しい東京2020オリンピックでは、「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」と題して、大会で使用する約5,000個の金・銀・銅メダルすべてをリサイクル金属だけで製造するという画期的な試みが行われました。全国から集めた使用済み携帯電話などの小型家電をリサイクルし、金約32kg、銀約3500kg、銅約2200kgもの資源を抽出してメダルに生まれ変わらせたのです。また、選手村のベッドに段ボール素材を採用したり、大会表彰式の表彰台を廃プラスチックから作成したりと、随所にサーキュラーエコノミー(循環型経済)の理念が盛り込まれていました。世界中のトップアスリートが集う祭典で、「ゴミも資源にできる」「大量消費から再利用へ」というメッセージを発信した意義は大きいでしょう。そして来年に迫ったパリ2024オリンピックでも、東京以上に強力なサステナ目標が掲げられていました。大会組織委員会は「史上最も環境に配慮した五輪にする」と宣言し、具体的には大会から出る温室効果ガス排出量を過去大会の半分に抑えることを大目標とし、その達成に向け、使い捨てプラスチックを一切使わない初の大規模イベントにすると表明し、大会会場の95%を既存施設や環境配慮型の仮設で賄い、必要なエネルギーは太陽光や地熱など100%再生可能エネルギーでまかなう計画です。大会期間中は電気自動車や水素バスなど排出ゼロの移動手段を積極活用し、選手村でも屋上ソーラーパネル設置や地元産の植物性食品の提供など徹底したエコ施策が取られました。スポーツの熱気とともに環境意識を盛り上げ、地球にやさしい五輪を次世代へのレガシーとして残そうという試みと言えるでしょう。こうした大型イベントのみならず、各種スポーツ大会やプロリーグでも独自の環境プログラムが進んでいます。欧州のサッカーリーグではクラブが主体となってスタジアムにソーラーパネルを設置したり、試合観戦時にリユース可能カップを導入してプラごみ削減を図ったりする例が増えています。マラソン大会では給水所のプラスチックカップを食べられる海藻由来のカプセルに置き換える実験も行われました。日本でもプロ野球やJリーグが地元自治体と協力して「カーボンオフセットマッチ」(試合開催に伴うCO2排出を植林などで相殺する取り組み)を開催するなど、新しい試みが登場しています。スポーツイベントそのものがSDGs達成や環境問題への啓発の場となりつつあり、観客も楽しみながら自然とサステナ意識が高まる効果が期待されています。おわりに:環境とスポーツの好循環へゼクシオの日にちなみご紹介したように、スポーツ用品メーカーのGX(グリーントランスフォーメーション)は素材開発から製造、イベント運営に至るまで幅広く進行中です。かつては性能やデザインで競い合っていた業界が、今では「いかに環境に配慮しているか」という価値でも競争する時代に入りました。環境に優しい製品づくりは、未来のアスリートたちが安心してスポーツに打ち込める地球環境を守ることにつながります。また、企業が本気で取り組むGXの姿勢はブランドの魅力を高め、ファンやユーザーの共感を呼ぶでしょう。ゼクシオをはじめとする各社の最新動向や挑戦は、スポーツを愛する私たちにとっても他人事ではありません。「エコだから選びたい」「この大会は環境に配慮しているから応援したい」——そんな風に環境とスポーツの好循環が生まれれば、きっと持続可能な未来に向けた大きな力になるはずです。