企業におけるCO2排出量計算の手順生産ライン、交通手段、建物、エネルギー使用など、排出源を特定します。排出量を測定する 排出源を特定した後は、各排出源から排出されたCO2の量を測定します。これには、計量機器の導入、サンプリング、分析、エネルギー使用量のモニタリングなどが含まれます。測定結果から排出量を計算する排出源から測定したCO2の量を基に、排出量を計算します。排出量の計算には、エネルギー使用量や生産量などの指標が使用される場合があります。減少策を検討し、計算された排出量をもとに二酸化炭素削減策を検討します。例えば、省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用、商品のリサイクル、削減目標の設定などが考えられます。結果を報告する企業は、計算された二酸化炭素排出量や削減策などの情報を報告する必要があります。報告には、国の法令や規制に基づいた報告が含まれますが、企業自身が自主的に報告する場合もあります。排出源の特定とCO2排出量の計算生産ラインや交通手段、建物、エネルギー使用などの二酸化炭素排出源を特定するためには、まず企業の活動領域を把握し、それらの領域で使用される資源やエネルギーの種類や量、使用方法を調査することが必要になります。たとえば、生産ラインで使用される機器やプロセスの種類や仕様、稼働時間、使用されるエネルギー源(電気、ガス、石油など)や量、排出量などを把握することで、そのラインからの二酸化炭素排出量を計算することができます。同様に、交通手段では使用する車両の種類や走行距離、燃料の種類や使用量、建物では使用する電気やガスの量や使用方法、エネルギー使用では使用する電気やガス、燃料などの種類や量を調査することが必要です。これらの調査や計算は、企業内のデータ収集や調査、エネルギー監視システムの導入、専門のコンサルタントの支援などを通じて実施されます。また、これらの情報をもとに、二酸化炭素排出量の削減目標を設定したり、排出量の削減に向けた取り組みを計画・実施することができます。建物のエネルギー使用量ある企業のオフィスビルの電気使用量が1年間で100,000 kWhである場合、そのビルからの二酸化炭素排出量を計算するには、以下のような式を用いることができます。二酸化炭素排出量(tCO2)= 電気使用量(kWh) × 排出係数(kgCO2/kWh) ÷ 1,000ここで、排出係数とは、電力会社が発行するグリーン電力証書や国土交通省が公表する電気のCO2排出係数などを用いて算出します。たとえば、国土交通省が発表している平成29年度の電気のCO2排出係数は、0.455kg-CO2/kWhです。これを元に計算すると、オフィスビルの1年間の二酸化炭素排出量は、以下のようになります。二酸化炭素排出量(tCO2)= 100,000 kWh × 0.455 kgCO2/kWh ÷ 1,000 = 45.5 tCO2このように、企業の活動領域や使用する資源・エネルギーの種類や量を特定し、排出係数を用いて計算することで、二酸化炭素排出量を算出することができます。生産ラインの二酸化炭素排出量の計算方法ある製造業の工場において、生産ラインに必要な機械の使用量や燃料の種類・量、生産数量などを特定し、以下のような式を用いて計算することができます。二酸化炭素排出量(tCO2)= 燃料使用量(kg) × 排出係数(kgCO2/kg燃料) ÷ 1,000 ÷ 生産数量(個)※排出係数とは、燃料ごとに異なる係数であり、国土交通省や省庁が公表するデータを用いて算出具体例な計算例を示すと生産ライン内の電力消費量:10,000 kWh電力消費に伴う二酸化炭素排出係数:0.5 kg-CO2/kWh生産ラインの稼働時間:8時間/日、250日/年20,000,000 kWh/年(年間の電力消費量)= 10,000 kWh/日 × 8時間/日 × 250日/年10,000 t-CO2(年間の二酸化炭素排出量) = 20,000,000 kWh/年 × 0.5 kg-CO2/kWh ÷ 1,000 kg/t以上のような形で計算できます交通手段の二酸化炭素排出量の計算方法例:企業の社員が通勤に使用する交通手段(自家用車、公共交通機関、自転車など)や距離を特定し、以下のような式を用いて計算することができます。二酸化炭素排出量(tCO2/年)=(距離 × 1日あたりの通勤回数 × 週あたりの通勤日数 × 週数 × 従業員数 × 二酸化炭素排出係数) ÷ 1,000※二酸化炭素排出係数は、交通手段ごとに異なる係数であり、国土交通省や省庁が公表するデータを用いて算出具体例な計算例を示すと従業員:500人1日あたりの往復距離:20キロ週あたりの通勤日数:5日二酸化炭素排出係数:0.2 kgCO2/kmこの場合、この企業による従業員の通勤によって1年間に排出される二酸化炭素の総量は以下の通りに計算されます。5,240 t-CO2(二酸化炭素排出量)=(20キロメートル × 2往復 × 5日 × 52週 × 500人 × 0.2 kgCO2/km)÷ 1,000エネルギー使用における二酸化炭素削減策各排出源に対する削減策の例をいくつか挙げると下記の通りです。建物に関する二酸化炭素削減策節水設備の導入:省エネルギーの節水設備を導入することで、水の使用量を削減する。LED照明の導入:省エネルギーのLED照明を導入することで、建物内での電力消費量を削減する。高効率な空調システムの導入:省エネルギーの空調システムを導入することで、建物内での電力消費量を削減する。生産ラインに関する二酸化炭素削減策原材料のリサイクル:廃棄物から再利用可能な資源を回収することで、原材料の使用量を削減する。エネルギー効率の改善:生産ラインにおける機器や設備のエネルギー効率を向上させ、電力消費量を削減する。再生可能エネルギーの導入:太陽光や風力などの再生可能エネルギーを利用し、生産ラインでのエネルギー需要を満たすことで、化石燃料による二酸化炭素の排出を削減する。交通手段に関する二酸化炭素削減策公共交通機関の利用:従業員の通勤において、自動車やバイクなどの個人交通手段ではなく、公共交通機関を利用することで、二酸化炭素の排出を削減する。テレワークの導入:オンライン会議システムなどを利用し、従業員が自宅から業務を行う「テレワーク」を導入することで、通勤による二酸化炭素の排出を削減する。自転車の利用:従業員が自転車を利用することで、個人交通手段による二酸化炭素の排出を削減する。削減策を実施した結果の報告企業は、自社のCO2排出量や削減策に関する情報を報告することで、社会的責任を果たすことができます。報告された情報により、企業の持続可能な経営や環境負荷の軽減を期待できます。二酸化炭素排出量企業は、自社の二酸化炭素排出量を計算し、その量を報告します。この際には、どのような範囲のCO2排出量を計算したのか、どのような計算方法を使用したのか、過去のデータと比較した場合の変化があるかなども報告します。削減策の実施状況企業は、二酸化炭素排出量を削減するための具体的な取り組みの実施状況を報告する必要があります。例えば、省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの導入、製品やサービスのライフサイクルにおけるCO2排出量の削減など、具体的な削減策の実施状況を報告します。カーボンニュートラル宣言企業は、自社のCO2排出量を削減し、残りの排出量を相殺することで、カーボンニュートラル宣言を行うことができます。カーボンニュートラル宣言により、企業はCO2排出量を削減し、環境負荷を軽減するための取り組みを積極的に進める姿勢を示すことが可能です。