はじめにこんにちは!サステナ編集部です!近年、世界各地で「今までに経験したことのない」ような異常気象が増えていると感じませんか?地球温暖化に伴い、猛暑や豪雨など極端な気象現象の頻度と強度が増していると指摘されています。実際、日本でも記録的な大雨の発生回数が増加傾向にあり、夏の猛暑日数も年々増えています。それだけでなく、一見矛盾しているようですが、大雪も異常気象の一つとして私たちの生活に影響を及ぼしています。例えば昨年末には十年に一度レベルの強烈な寒波が日本列島を襲い、各地で大雪となりました。その際は国内で飛行機の欠航が相次ぎ、新幹線を含む鉄道も運休するなど交通網が大混乱に陥りました。温暖化が進むと雪は降らなくなると思われがちですが、地域によっては短時間で一気に降る豪雪(いわゆるドカ雪)が増える可能性も指摘されています。このように気候変動によって天候の振れ幅が大きくなり、私たちの社会や産業にさまざまな影響が出始めています。トヨタ工場の稼働停止とその影響そんな異常気象の影響が、遂には日本を代表する企業にも直接及ぶ事態となりました。19日、世界最大手の自動車メーカーであるトヨタ自動車は、記録的な降雪の影響により東海三県の工場すべてで生産を一時停止する措置を取りました。トヨタによると、各地の大雪で部品の配送網が乱れ、従業員の通勤にも支障が出る恐れがあったため、全工場の第2シフト(夕方以降の勤務)を止める決断をしたとのことです。降雪のピークが過ぎる翌朝(20日朝)には全工場で稼働を再開する見通しとなっています。14工場もの稼働停止は異例の規模ですが、これはトヨタの国内生産拠点が集中しているがゆえのリスクでもあります。トヨタは国内に14の完成車工場を抱えており、それらで1日に約13,500台もの車両を生産しています。つまり、丸一日操業を停止すると理論上はそれだけ多くの生産台数が遅れる計算になります。今回の停止期間は半日程度と短く、トヨタは「後日残業や休日出勤で挽回できる」としていますが、生産ラインがフル稼働に近い状態では穴埋めも容易ではないとの指摘もあります。さらに、このような大規模停止はトヨタ単体に留まらず自動車産業全体へ波及する可能性があります。トヨタの工場が止まれば、その部品を供給する多数のサプライヤー企業も同時に生産計画の見直しを迫られます。自動車産業は「ジャストインタイム方式」で在庫を最小限に抑えているため、部品1つの遅延が全体の生産を止めかねません。今回のような雪害で主要メーカーが止まると、関連部品メーカーや物流企業も含めたサプライチェーン全体に混乱が生じる恐れがあります。また、大雪による交通マヒは自動車以外の業種にも影響します。商品や原材料の配送が滞れば、小売業では店頭の商品不足、製造業では必要な材料が届かずライン停止、といった事態が考えられます。異常気象による一企業の停止が、経済の隅々にまで波及し得ることを今回のケースは示したと言えるでしょう。経済への影響と今後の対策短期間とはいえ、日本を代表する製造業の生産停止は経済に少なからず影響を与えます。まず直接的には、トヨタの生産停止による一時的な経済損失が挙げられます。仮に半日で数千台規模の生産遅延が発生した場合、その販売金額ベースでは数百億円規模にのぼる可能性があります。ただし、トヨタは生産再開後に挽回生産を行う計画であり、最終的な年間生産台数や業績への影響は限定的と見られます。一方で、サプライヤー各社も含めた関連企業では、納期調整や残業対応など余計なコストが発生するでしょう。こうした見えにくい経済的コスト(機会損失や復旧のための追加費用)は積み重なると無視できません。日本経済全体で見れば、今回のような一時的な工場停止が即座にGDPに大打撃を与えるほどではありません。しかし、気候変動による異常気象が今後も頻発すれば、企業活動の中断が繰り返し発生する可能性があります。その蓄積によって経済成長が押し下げられたり、消費者にも影響が及んだりするリスクは無視できません。例えば、新車の生産遅延が度重なればユーザーの納車待ち期間が長引く可能性がありますし、農業生産や物流への気象被害が続けば物価上昇につながるかもしれません。異常気象が「一時的なイレギュラー」ではなく「新たな日常」になりつつある中で、経済への影響もじわじわと表れてくるでしょう。では、企業や社会は今後どのように対応していくべきでしょうか。まず重要なのはリスク管理と事前対策の強化です。トヨタのような製造業では、自然災害や天候リスクに備えたBCP(事業継続計画)を策定し、定期的に見直すことが不可欠です。実際トヨタも東日本大震災以降、災害時の代替生産体制やサプライヤーとの情報共有体制を強化しています。具体的には、工場や部品倉庫を複数地域に分散して被害を局所化させたり、重要部品について一定の在庫を確保しておいたりする取り組みが考えられます。また、天気予報や気象データの分析を活用し、異常気象が予測される場合には早めに生産計画を調整するといった柔軟な対応力も求められます。そしてもう一つの大きな柱が、脱炭素(カーボンニュートラル)への取り組みです。気候変動そのものを緩和しなければ、異常気象の根本的な解決にはなりません。企業には自社の温室効果ガス排出を削減する責務があります。トヨタも「環境チャレンジ2050」において2050年までに工場からのCO2排出をゼロにする目標を掲げており、再生可能エネルギーの導入や生産工程の電化・省エネ化を進めています。自動車メーカーで言えば、ガソリン車から電気自動車や燃料電池車への移行も温暖化対策の一環です。さらにサプライチェーン全体での脱炭素化(部品製造や物流でのCO2削減)も求められるでしょう。気候変動によるリスクが現実のものとなった今、企業は「攻め」と「守り」の両面で動く必要があります。すなわち、守りの部分では異常気象に耐える強じんな経営基盤を作り(リスク分散・BCP等)、攻めの部分では脱炭素など持続可能な社会づくりに貢献していくことが重要です。今回のトヨタの事例は、一見当たり前に思える天候がいかに産業に影響を及ぼしうるかを改めて示しました。私たち一人ひとりも、このニュースを契機に気候変動と経済の関係について考え、持続可能な社会の実現に向けた行動を意識してみたいですね。出典Reuters (2023年1月25日). Heavy snow causes havoc in Japan as cold snap sweeps through Asia (大雪で日本各地に混乱、トヨタ14工場が第2シフト停止など). ※URL: https://www.reuters.com/world/asia-pacific/cars-stranded-flights-cancelled-heavy-snow-blankets-japan-2023-01-25/Reuters (2023年8月30日). Toyota to restart Japan production on Wednesday after system failure (トヨタがシステム障害で国内生産停止後に再開した件). ※URL: https://www.reuters.com/business/autos-transportation/toyota-halts-operations-12-japan-factories-due-system-failure-nhk-2023-08-29/環境省 (2020年). 気候変動に関する統合的評価報告書 (Climate Change in Japan and Its Impacts) 第1章より抜粋. ※URL: https://www.env.go.jp/content/900449807.pdfYahoo!ニュース (2021年1月29日). 「地球温暖化で大雪が増える!? 既に起こり始めている気候変動の行く末」 (気象研究所・川瀬氏のインタビュー記事). ※URL: https://sdgs.yahoo.co.jp/originals/76.htmlGreenpeace 東アジア / Moody’s (2022年8月). 自動車産業の気候リスクに関する報告書 (ToyotaのBCP強化についての言及あり). ※URL: https://www.greenpeace.org/static/planet4-eastasia-stateless/2022/08/f244dece-auto-industry-climate-impacts-briefing.pdf