プロローグガンプラをGHG排出量の観点から考察する前にそもそもガンプラって何かのお話を少ししたいと思います。国民的な人気アニメ「ガンダム」のプラモデル(模型)の略でガンプラなわけですが、最初に発売されたのは1980年7月で40年以上もの間、根強い人気を誇っています。発売当初は1個300円程度と気軽に手に入るお値段でした。発売当初のガンプラは色分けされていない一色のもので組み立てにも接着材が必要でしたが、技術の進歩と共にそのクオリティも磨かれ、今ではアニメさながらの細部まで拘り抜かれた商品が数多く発売されています。ガンプラは主に株式会社バンダイから発売されているものが主流で、はじめからほぼ設定どおりの色分けができるのは、世界でもバンダイだけがなせる技です。国内はもちろん、海外で売られているガンプラも日本で生産されています。ガンプラは年間1000万個、現在までに累計7億個(2020年5月時点)を販売しています。これを日本の人口約1億2500万人(2024年3月8日現在)で割ってみると、なんと日本人1人当たり5.6個のガンプラを買っていることになります。ガンプラに使用されるプラスチックについて@認めたくないものだな。ガンプラゆえの過ちというものをさて国民的な人気商品ともいえるガンプラですが名前の通りプラスチックで作られています。ガンプラを一度でも作成したことがある人ならお分かりかと思いますが、ガンプラには組み立てに必要なパーツを固定しているランナーと呼ばれる不要パーツが存在します。下記の写真がランナー部分です。当然この部分は不要ですので各家庭で廃棄されます。今回は廃棄されるランナーに着目して、本記事の主題である年間でどの程度不要なプラスチックとGHG排出量が出ているのかを考えてみたいと思います。ちなみにランナーはガンプラを販売している会社視点で立てばscope3のカテゴリー12[販売した製品の廃棄]にあたりますね。さて、ガンプラはHG(1/144)やMG(1/100)、RG(1/144)など様々なシリーズがあり、商品によっても内容量が変わりますがここでは商品全体の重さを平均として一律400gと考えてみましょう。商品には説明書とランナーとパーツが存在しますがランナーを商品の30%を占めていると仮定します。つまりは120gがランナーですね。前述しましたが年間1000万個の商品が売れていますので、年間1,200tの廃棄プラスチックが商品から出ると想定できます。東京都の環境局の定義では主要な原料である原油の採掘から、流通、製造、消費、処分のそれぞれの段階で排出されるCO2量の合計はプラスチック1kg当たり5kg程度なので、年間1,200tのプラスチックのGHG排出量は6,000tCO2となります。あくまで概算であり正確な値ではないですがなかなかの量の排出量だということが分かりますね。もちろん、バリューチェーン、サプライチェーンの各工程で排出されるGHG排出も無視できないので相当なものになりそうですね。プラスチックの回収などバンダイ様のお取組み@二度もぶった。親父にもぶたれたことないのにガンプラのランナーのGHG排出量に関して前段で言及しましたが、製造・販売元のバンダイ様はどのような取り組みをしているのかお話します。バンダイ様では「ガンプラリサイクルプロジェクト」として不要となるランナーの回収に力を入れており、2021年4月1日(月)からの1年間で、年間目標回収量の110%となる11トンを超えるランナーを回収したと発表しています。「ガンプラリサイクルプロジェクト」は循環型社会の形成に貢献していくことを目指しており、ガンプラのランナーを全国の「namco」をはじめとするバンダイナムコアミューズメントの対象店舗約200カ所に専用のボックスを設置して回収、リサイクルしています。また、「ガンダムR(リサイクル)作戦」と題したイベントの中では、約4.4万人にエコプラ(生産の過程で出るプラスチックの廃材や回収した廃ランナーを原料に生産したプラモデル)を配布し、製作から回収までを体験することで「ガンダム」や「ガンプラ」を通じてリサイクルへの関心を高める活動を実施しています。ガンプラはその特性からどうしても廃棄プラスチックが多様に出てしまう商品だと言えますが、このような取り組みにより環境に配慮したガンプラが増えることでこれからも魅力的な商品が誕生することに期待できます。また、日本を代表する商品として海外からの関心も高いと考えられ、ガンプラの製造・販売元のバンダイ様が廃棄プラスチックのGHG排出量の削減の市場形成を担うような姿になれば良いと感じる部分があります。エピローグ今回はガンプラをGHG排出量の観点からお話しました。このような日本の誇れる文化が環境にも配慮されたものとなれば、別の意味でも注目を集めることができると思います。ですが本記事で述べた通りプラスチックを多分に使用するガンプラのGHG排出量は多く、今後も取り組みの強化が重要となってきます。脱炭素に向けた世界の動向をガンプラ発展のさらなる機会と捉えてより良い商品をバンダイ様に期待したいと思います。「チャンスは最大限に生かす、それが私の主義だ。 」(シャア・アズナブル)