サステナブル・トゥデイでは、過去の記事(長崎発、藻場再生プロジェクト「リーフボール」で海の未来をつくる)でリーフボールを製造している朝日テックを取材した様子をご紹介しました。今回は、「そもそもリーフボールとは何か」「どういった効果があるのか」といった疑問にお答えすべく、リーフボールの仕組みについて解説していこうと思います。リーフボールとは?リーフボールとはリーフボールは、アメリカのリーフボール財団が開発した球状のコンクリートブロックで、砂浜の海岸浸食防止やサンゴ礁再生の基盤として世界中で活用されている人工礁です。自然のサンゴ礁と同じように海洋生物が定着しやすい構造となっています。このリーフボールを使って、磯焼けを解消する取り組みに注目が集まっています。深刻化している磯焼け磯焼けとは、海の沿岸部で海藻が減少し、岩肌が露出してしまう現象のことです。主な原因として、温暖化による海水温の上昇などによる環境変化により、海藻を食べるウニや魚が増え食害が進むことが挙げられます。海藻が群生する場所を藻場といい、魚介類の産卵場所や小魚のすみかとして機能することから、「海のゆりかご」とも呼ばれています。さらに藻場は二酸化炭素を吸収する役割も担っているため、海洋環境だけでなく地球全体の環境保全にも貢献しています。そんな重要な藻場の再生を手助けしているのがリーフボールです。リーフボールがもたらす効果、海藻の成長を促すフルボ酸鉄実はリーフボールは穴の開いたただのコンクリートブロックではなく、フルボ酸鉄という成分を混合して作られます。フルボ酸鉄は、自然界では森の落ち葉や枝などが微生物によって分解されて生成される「フルボ酸」と「鉄」が結合してできる物質です。作られたフルボ酸鉄は川から海に流れ込み、海藻の栄養分となります。しかし、近年の気候変動の影響により、海への供給は減少しています。このフルボ酸鉄がリーフボールからゆっくりと海中に溶け出して海藻に栄養を与え、生育を促進します。さらに、リーフボールはその形状と構造により、波浪に強く、海藻の着生を促す特徴も持っています。また、表面の粗さやpHの調整により、海藻の胞子が着生しやすく、長期間にわたって安定した藻場の形成を可能としています。藻場再生の取り組みクロメの苗種の育成藻場を構成する海藻の1種であるクロメの育成の流れをご紹介します。クロメの種糸クロメの胞子から発芽した種糸をロープに付着させ、水槽内で培養します。種糸の水槽管理小さなリーフボールに種糸を付着させ、種糸を適切に管理するために水槽で一定期間育成します。種糸を海中で育成ある程度育った種糸を海中に設置し、成長を促します。海中の自然環境で育てることで、クロメはより大きく成長します。成長した種糸海中での養殖を経て、大きく成長したクロメ。種糸がしっかりとリーフボールに付着し、多くの葉が育っています。動画:クロメの種糸をリーフボールに巻き付ける様子%3Ciframe%20title%3D%22vimeo-player%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fplayer.vimeo.com%2Fvideo%2F1053298213%3Fh%3Deba06194ff%22%20width%3D%22640%22%20height%3D%22360%22%20frameborder%3D%220%22%20allowfullscreen%3D%22%22%3E%3C%2Fiframe%3Eまとめリーフボールは、藻場・サンゴ礁の再生、海洋生物の生息地確保、といった多くの役割を果たしています。しかしながら、その存在はまだまだ知られていません。海の生態系の回復に貢献する革新的な技術を持つリーフボールを普及させるためには、さらなる研究や実証実験、資金確保、地域社会の協力が必要不可欠です。私たちの生活にとって欠かせない存在である海の未来を守るリーフボールの存在をもっと多くの方々に知っていただけるよう、私たちサステナ編集部は発信することを通じてこの活動を応援していきたいと思います。【出典】・ 一般社団法人マリンハビタット壱岐・ 株式会社朝日テック・ 我が国沿岸の磯焼けの現状