今、注目の新交通システム、LRT。LRTはなぜ環境によいとされているのか、宇都宮市の事例をもとに解説します!!LRTとは?ライトレール(LRT)は、従来から都市の公共交通機関として広く利用されている路面電車を時代の要請を踏まえ最新技術によって進化した新しい路面電車交通システムです。1964年の東京オリンピック以降、日本ではマイカーの普及と高速道路の建設により、多くの路面電車が廃止されました。しかし、自動車による慢性的な交通渋滞、大気汚染、駐車場の不足、さらには自動車を所有していない・運転が難しい人が社会生活に不便を強いられる「交通弱者」などの問題により、再びLRTが見直されるようになりました。欧州をはじめとする世界各国でも、LRTが都市交通の中心として導入されています。LRTの車両は従来の路面電車とは違い、低床式でバリアフリー構造を採用しています。これにより、車椅子やベビーカー利用者・足腰の悪い高齢者の利用も容易となり、すべての市民にとって利用しやすい公共交通機関となっています。また、LRTは一般に高度な運行管理が行われており、短い待ち時間や安い運賃など、利便性も高いです。宇都宮市のLRTプロジェクト宇都宮市は、「ネットワーク型コンパクトシティ(NCC)」構想を掲げ、地域の拠点や集落を結びつける取り組みを進めています。2015年には第3セクターによって「宇都宮ライトレール(株)」が設立され、2023年8月に日本初のLRTが開業しました。この路線はJR宇都宮駅と栃木県芳賀町を結ぶ約15kmの路線です。宇都宮市にLRTが導入されたのには2つの理由が挙げられます。一つは「都市構造の変革」、もう一つは「再エネによる公共交通網構築」です。今回は宇都宮市のLRT導入理由、「再エネによる公共交通網構築」の事例を参考にLRTがなぜ環境に優しいといわれているのか取り上げます。再生可能エネルギーで動く:「ゼロ・カーボン・トランスポート」の実現LRTの導入は、環境負荷の削減に大きく寄与します。宇都宮市では、地域新電力を立ち上げ、市の廃棄物発電による電力をLRTに供給する計画です。これにより、LRTの電源を100%再生可能エネルギーで賄い、「ゼロ・カーボン・トランスポート」の実現を目指しています。LRTが走行時に排出するCO₂はゼロであり、化石燃料に依存する交通手段に比べて環境負荷が大幅に低減されます。引用:宇都宮市環境部環境政策課 ,令和 4年 11月 1日 コンパクト・プラス・ネットワークによる 脱炭素モデル都市構築 ~LRT沿線からはじまるゼロカーボンシティの実現~中心市街地活性化が環境負荷低減にLRTは都市の活性化にも寄与します。宇都宮市では、主要な乗り場にトランジットセンター(乗り換え施設)を設け、バスや地域内交通、自転車などとの接続を強化しています。これにより、公共交通の利便性が向上し、自家用車への依存が減少します。結果として、交通渋滞の緩和や自動車によるCO₂排出の低減が期待されます。国立環境研究所の研究によれば、LRTは乗客一人を1キロメートル運ぶ際に排出するCO₂が自家用車の約半分(51%)であり、窒素酸化物の排出量も約3分の1(32%)に低減されるとされています。このように、自家用車を公共交通機関に乗り換えるだけで大きな環境負荷低減が期待できます。また効率的な都市交通の実現にもLRTは大きな役割を果たしています。宇都宮市の取り組みでは、LRTとバスを組み合わせた公共交通の活性化と中心市街地や公共交通沿線への機能集積(ネットワーク型コンパクトシティ(NCC))を推進しています。無秩序に広がった都市(スプロール)はインフラ(道路、水道、電力など)を維持するのに多大なコストがかかります。インフラの維持には大量のエネルギーが必要であり、さらに住民の移動距離が増えることで日常的なエネルギー消費も増加します。これにより、温室効果ガスの排出量が増えます。LRTによるコンパクトシティの実現は都市のエネルギー効率を向上させ、環境負荷低減に寄与するのです。引用:都市行政におけるカーボンニュートラルに向けた取組事例集 令和5年3月国土交通省 都市局 都市政策課都市環境政策室最後にLRTは、環境負荷の削減、エネルギー効率の向上、交通渋滞の緩和、都市の活性化など、多くの点で環境に優れた交通システムです。特に、宇都宮市の取り組みは、LRTの利点を最大限に活用し、持続可能な都市づくりを実現するためのモデルケースとなっています。LRTの普及が地球環境の保護と都市の持続可能な発展にどのように貢献していくのか、今後も注視したいですね。