2024年1月にJ-クレジット事務局より2023年度までの最新のJ-クレジットに関するデータ集が公表されました。今回は公表されたデータを基にJ-クレジットに関して前編と後編の2回に分けて考察していきます。前編ではプロジェクト認証量やクレジット発行数量、申請費用など創出面でのデータを、後半では価格や創出動機など活用面でのデータを用いて考察していきます。プロジェクト登録件数の推移まずはプロジェクトの登録件数の推移です。こちらは移行を含むデータですが2023年度に1000件を超えました。全体的に2013年度より登録件数は増加傾向にありますが、近年の増加件数に注目すると2020年から56件、80件、99件と1年ごとに着実に年間の認証件数が増えていることが分かります。まだまだ、J-クレジットの需要は低いですが今後さらに増加をたどると予想され、2024年10月にはGXリーグにて排出権取引が開始されることからも登録件数は今年度より更なる増加をたどるのではないかと期待できます。クレジット認証量の推移続いてクレジットの認証量の推移ですが2023年度では936万t-CO2のクレジットが創出されました。こちらのデータも移行含むものですが全体的にプロジェクト登録件数が増加しているのでクレジットの認証量も増加しています。ただし、2022年度から2023年度にかけての認証量の推移をみると47万t-CO2と例年と比較して増加率が減少しています。要因としては新規方法論が追加され、プロジェクトの多様化や更新による方法論の見直しにより、1プロジェクト当たりの発行数量が少量でもプロジェクト化できる方法論が増えたことで、発行数量が抑えられたと考えられます。どの方法論においてもプロジェクト登録年より年々発行数量が増加する見込みがある為、来年度以降での増加に期待したいです。方法論別の割合プロジェクト方法論別の創出割合を見てみましょう。方法論別のデータは1つの工事や事業所等における削減・吸収活動に対しての「通常型」と複数の削減・吸収活動を取りまとめて申請する「プログラム型」に分けて紹介します。通常型では木質バイオマスが約半数のクレジット発行量を占めています。バイオマス由来は方法論も多く森林管理により発生した間伐材や製造業や建設業などで残った木材や廃棄物への対策として需要が高いと考えらえます。木材は量も多いと想定される為、発行量も多い傾向にあります。次いで発行量が多いのはボイラーとなりますが設備更新などは設備投資の観点からも企業の財務面と相性の良い領域で手軽にクレジットが創出できるイメージがあり、発行量が多いと考えられます。プログラム型では太陽光発電が過半数以上を占めています。太陽光パネル導入により再生エネルギーを使用した自社での電力消費量、GHG排出量の削減と合わせてクレジットが創出できる為、企業にとってメリットが多く導入しやすい領域といえます。また、プログラム型の多くは太陽光パネル導入支援の企業が地域の太陽光パネルを設置している住宅などを取りまとめて申請する形が多いです。その次に多いのがコンジェネレーションですがこちらも太陽光と同様に地域で取りまとめての形が主流です。方法論別の発行数量から、設備導入や更新によってクレジット創出する事が出来る分野の発行数量が多いです。導入、更新することでGHG排出量の削減とセットでクレジットが創出できるのでメリットも多く申請しやすさもあります。Jクレジット申請費用クレジット申請費用のデータを見ると最も安価なものは再エネ通常型で平均額860,584円で、最も高いのは森林通常型の2,166,184円となります。森林はプロジェクト自体の規模感や妥当性の確認、検証の工数の多さからどうしても費用がかさんでしまう傾向にあります。こういった費用面からも前述した太陽光やバイオマスなどのプログラムが多い要因と考えられそうです。前編統括前編では創出面のデータを中心に考察しました。プロジェクト登録件数の増加と共にクレジットの認証量も年々増加していることが分かりました。また。方法論では木材バイオマスや太陽光、ボイラー、コンジェネレーションなどが多く比較的に設備投資面でのプログラムが多い傾向にあります。来年度以降ではこうした方法論が飽和化状態となり今まで認証量の少ない方法論や新たな方法論での創出も増えてくるのではないかと考えられます。今後の認証量が増えることを期待したいです。それでは後編でお会いしましょう~