二国間クレジット制度(JCM)とは?二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism, JCM)は、二国間で協力して温室効果ガスの排出削減プロジェクトを実施し、その削減量をカーボンクレジットとして両国間で共有する仕組みです。JCMの基本的な概念JCMの基本的な概念は、日本企業による投資を通じて優れた脱炭素技術やインフラ等の普及を促進し、パートナー国の温室効果ガスの排出削減・吸収や持続可能な発展に貢献することです。 パートナー国での温室効果ガスの削減に対する日本の貢献度を定量的に評価して、クレジットを獲得します。 このJCMクレジットによって、日本とパートナー国の両国のNDC*の達成に貢献するとともに、相当調整をおこなってダブルカウントの回避を図ります。*NDC(Nationally Determined Contribution:国が決定する貢献)全ての国が温室効果ガスの排出削減目標を「国が決定する貢献(NDC)」として5年毎に提出・更新する義務がありますJCMのメリットJCMのメリットは、温室効果ガスの削減、技術移転や経済面での恩恵をもたらす点が挙げられます。・地球全体の温室効果ガスの削減JCMは、日本とパートナー国が協力してプロジェクトを実施することで、温室効果ガスの削減を効率的に達成できます。特に、技術や資金提供を通じてパートナー国の排出削減能力を高め、地球規模での気候変動対策に貢献します。・パートナー国の技術力強化と経済成長JCMにより、日本の低炭素技術や再生可能エネルギー技術がパートナー国に導入され、パートナー国の技術革新が促されることで長期的な経済発展に貢献します。JCMプロジェクトにより生み出されたクレジットは、国際的な排出削減目標の達成に利用できます。両国間でクレジットを共有するため、日本も自国の排出削減目標の達成に向けた手段を得ることができ、パートナー国はプロジェクトからの技術や資金的な支援を受けつつ、クレジットの一部を活用して自国の目標達成を図ることができるので、両国にとってメリットがあります。JCMのパートナー国JCMのパートナー国は、主にアジアの途上国や新興国が中心で、技術移転や持続可能な発展を目指して協力しています。日本は、2025年を目途にパートナー国を30か国程度とすることを目指して関係国との協議を加速してきました。パートナー国の更なる拡大や実施体制の強化に加え、CCS等の大規模プロジェクトの実施に向けた検討を進めながら、活用の推進を図っています。2024年10月現在、JCMのパートナー国は以下の29か国となっています。アジアアフリカヨーロッパ中南米オセアニア中東モンゴルバングラデシュモルディブベトナムラオスインドネシアカンボジアミャンマータイフィリピンスリランカウズベキスタンキルギスカザフスタンエチオピアケニアセネガルチュニジアアゼルバイジャンモルドバジョージアウクライナコスタリカメキシコチリパラオパプアニューギニアサウジアラビアアラブ首長国連邦JCMのスキームJCMのプロジェクトはまず、日本やパートナー国の企業や団体から提案され、両国が設置する共同委員会によって認証されます。この認証を受けたプロジェクトは、日本から技術や資金の支援を受け、現地で具体的に実施されます。プロジェクトが進行する中で、削減された排出量はモニタリングによって正確に測定され、そのデータは第三者機関によって検証されます。このプロセスを経て、削減された温室効果ガス量はJCMクレジットとして正式に発行されます。発行されたクレジットは日本とパートナー国で分配され、両国がそれぞれの温室効果ガス削減目標を達成するために使用します。JCMによるNDCへの貢献クレジットの発行対象となる排出削減量は、リファレンス排出量とプロジェクト排出量の差として定義されます。リファレンス排出量は、提案されたプロジェクトがパートナー国のNDCの達成に貢献するように設定されます。削減された排出量に基づき、日本が獲得したクレジットは、日本のNDC達成に向けて活用され、残りのクレジットはパートナー国に割り当てられ、パートナー国のNDC達成に貢献します。このように、両国が協力して実施するJCMプロジェクトは、互いの排出削減目標達成に資する形で進められます。JCMのプロジェクト例JCMのプロジェクトは現在までに252件のプロジェクト事例があります。内訳としては、再生可能エネルギー約56%、次いで省エネルギー約34%で、この2つが大半を占めています。JCMの今後の方向性令和6年度より、同一国における類似技術の採択実績が10件以上である下記の国においては、当該技術の補助金制度によるJCMの採択はしない(民間JCMによる実施を期待する) • 太陽光発電※ :ベトナム、チリ、タイ、フィリピン • 小水力発電 :インドネシア新規署名国12か国で、第1号となる案件の組成を目指している※2022年8月以降に署名した、セネガル、チュニジア、アゼルバイジャン、モルドバ、ジョージア、スリランカ、ウズベキスタン、 パプアニューギニア、アラブ首長国連邦、キルギス、カザフスタン、ウクライナ導入実績のない優れた脱炭素技術や大型案件は優先的に支援補助金に関する審査の条件を見直し、民間によるJCMへの移行を加速していくまとめ二国間クレジット制度(JCM)は、日本とパートナー国が協力して温室効果ガスの削減に取り組む実践的な仕組みです。両国がそれぞれの技術や資源を活用し、プロジェクトを進めることで、排出量の削減、気候変動対策に貢献しています。日本企業の優れた技術が海外で温室効果ガスの削減と経済発展に寄与していることは、とても素晴らしいことであると同時に、さらなる発展を期待します。出典:環境省「二国間クレジット制度の最新動向」