はじめにこんにちは、サステナ編集部です。一昨年の大阪杯を制し、その後故障に見舞われ復帰に向けて調整をおこなっていた競走馬ジャックドールですが、けがの再発による引退が正式に発表され、私を含め多くの競馬ファンが驚きと寂しさを感じています。華麗な走りでGⅠ競争を盛り上げてきた存在であり、レースに出走するたびに注目を集めた馬でした。そんなジャックドールの引退は、単に競走馬のキャリアが終わるだけでなく、ファンにとってはひとつの時代が終わるような感覚を与えています。SNSでも「復帰待っていたのに…」という声や、「今までたくさんの感動をありがとう!」といった感謝のメッセージが多く見られました。馬はしゃべることができませんが、レースにおける躍動感やレース後の様子から、人間との深いコミュニケーションを築いているかのように感じられることもありますよね。ただ、こうした華やかな舞台の裏には、レースに出場するまでの多大なトレーニングや、競馬を支えるさまざまな業界の人々の努力があります。そして、競馬産業は多くの人の生活や雇用を支える一方、やはり環境への影響も無視できません。ジャックドールの引退を機に、改めて競馬と環境の関係性を考えてみたいと思います。そもそもの競馬のビジネス構造競馬と聞くと、「公営ギャンブル」というイメージがまず浮かぶ方も多いかもしれません。事実、日本の競馬は地方競馬や中央競馬(JRA)などがあり、その売上の一部が自治体の収入源や社会貢献に回されています。競走馬がレースを走り、馬券が売買されることで成り立っているわけですが、その裏側には大きな経済圏があります。競走馬を育てる生産牧場、トレーニングをする調教施設、さらにそれを支える飼料供給や医療関係、競馬場の運営など、さまざまな業者が関わっています。この巨大なビジネスは、国内だけでなく海外の血統管理やセリ市(馬の競り市)とも連動しており、国際的にも重要な市場のひとつです。また、競馬好きの観光客が増えることで、地域経済が潤うこともありますよね。とはいえ、大きな産業であるがゆえに、環境に対しても相応のインパクトを与えているのは確かです。たとえば、馬を輸送するための移動手段や競馬場の建設・維持管理、飼料生産に伴う農地利用など、多岐にわたる影響があります。そして、その影響をどのようにコントロールしていくかが、現代のサステナ社会においては重要な課題となってきています。競馬が環境に与える影響とは?まず、競馬と環境の関係を考える上で大きいのは「飼料の生産」と「土地利用」です。競走馬は高品質な飼料を大量に必要とします。競馬界が消費する穀物や牧草などは、世界的な食料需給のバランスにも影響を与える可能性があります。もちろん、日本国内だけでまかなわれるわけではなく、海外からの輸入も多いため、輸送コストやCO₂排出量の問題も深刻です。さらに、調教施設や牧場には広大な土地が必要です。自然と共存しながら馬を飼育することは、ある意味で環境を保全する役割も果たしている一方、過剰な土地開発が生じる場合もあります。競馬場そのものも大きな敷地を必要とするため、地形の改変や生態系への影響が懸念されることもあります。次に挙げられるのが「馬の輸送による環境負荷」です。競走馬はレースや調教のために国内外を移動することがありますが、空輸やトラック輸送などの手段を使う場合、そのたびに化石燃料が消費されます。もちろん他のスポーツや産業にもいえることですが、移動が多いだけに環境へのインパクトは小さくありません。もうひとつは競馬場の「エネルギー消費」です。競馬場では照明や空調、清掃、芝のメンテナンスなど、レースが開催されていない時期でも一定のエネルギーを使います。このエネルギーが再生可能エネルギーから供給されているかどうかも、環境負荷を考える上で重要なポイントになります。環境負荷を減らすための取り組みと今後の課題では、競馬業界はこれらの課題に対して、どのような対策を打ち出しているのでしょうか。最近は、国内外の競馬場や生産牧場で、再生可能エネルギーの導入や敷地内の緑化への積極的な投資などが進められています。特に大規模な牧場では、太陽光パネルを導入することで、飼育施設や調教施設で使う電力をクリーンエネルギーに切り替える動きも見られます。飼料の面では、可能な限り地産地消を目指す取り組みも増えています。地域の農家と連携し、余剰作物や残渣をうまく活用できないか検討するなど、環境と地域経済の両面にプラスになる事例も少なくありません。さらには、輸送にかかるCO₂をオフセットするために森林保全プロジェクトに投資したり、馬運車の燃料をバイオディーゼルやEVに転換しようと模索している例もあります。一方、施設の建設や改修においては、生態系への影響調査を行い、工事による植生破壊を最小限に抑える取り組みが必要となります。競馬の醍醐味である芝コースの維持にも、化学肥料を抑えたり、農薬を使わない管理方法を模索する動きがでてきています。こうした努力はすぐに成果が出るわけではありませんが、競馬界全体で取り組むことで、より持続可能なビジネスモデルが構築できると期待されています。とはいえ、競馬産業は複数のステークホルダーが絡むため、全員が同じ方向を向くのは容易ではありません。ジャックドールのように一世を風靡する馬が引退するタイミングは、業界全体やファンが環境と競馬の未来を真剣に考える好機かもしれません。競馬は多くの楽しみと熱狂を与えてくれるコンテンツだからこそ、その裏で生じる環境問題や動物福祉の問題にも、より一層の配慮が求められます。最終的には、私たち一般消費者の意識も重要です。「馬券を買う」行為が、ただのお金のやり取りだけでなく、「競馬の持続可能性」や「社会貢献」にもつながるという視点を持つことで、業界全体がサステナブルに進化する後押しになるかもしれません。今後は、環境ラベルのついた馬券や、競馬場でのエコイベントなど、消費者を巻き込みながらエコを推進する企画も期待したいところです。ジャックドールの引退は、多くの競馬ファンにとって感慨深い出来事ですが、この機会に「競馬と環境」の問題に目を向けることこそが、次の世代の馬たちにも安心して走れる未来をつなぐ第一歩となるのではないでしょうか。私たちもファンの一人として、競馬の魅力を楽しみつつ、地球への配慮も忘れずに応援していきたいですね。おわりにここまでご覧いただきありがとうございました!ジャックドールの引退で一抹の寂しさを感じつつも、環境のことを一緒に考えてくださった皆さんに感謝します。競馬が今後も魅力ある形で発展していくために、私たちにできることは意外とたくさんあるかもしれません。これからもサステナ編集部では、いろいろな角度から環境と暮らしの情報をお届けしていきますので、ぜひお楽しみに!