はじめにこんにちは!サステナ編集部です!日本GXグループ株式会社が運営する日本カーボンクレジット取引所(JCX)や、東京証券取引所(東証)のカーボンクレジット市場では、J-クレジットがプロジェクトの種類ごとに分類・取引されています。本記事では、その代表的な6種類である 再生可能エネルギー(電力)、再生可能エネルギー(熱)、再生可能エネルギー(バイオマス)、省エネルギー、森林、農業 について、どのような特徴があるのかを解説します。また、それぞれの現在の価格や過去の価格動向を比較し、価格変動の背景や要因についてもできるだけわかりやすく説明します。モバイルアプリカーボンクレジット取引所はこちら再生可能エネルギー(電力)J-クレジット「再エネ(電力)」のJ-クレジットは、太陽光発電・風力発電・水力発電など再生可能エネルギーによる発電によってCO2削減した量をクレジット化したものです。企業が再エネ由来の電力を調達・利用したとみなせるため需要が高く、特にRE100(事業で使う電力を100%再生可能エネルギー由来にする国際イニシアティブ)に参加する企業から注目されています。このため、再エネ(電力)クレジットの需要は近年急増し、取引価格も上昇傾向にあります。東証のカーボンクレジット市場でも、再エネ(電力)クレジットは比較的高値で取引されています。2022年の実証段階では平均約1,300-3,500円/トンCO₂程度でした。直近の正式市場(2023年後半〜現在)では平均取引価格が約6,500円/トンCO₂に達しており、2倍以上の大きな上昇となっています。この上昇の背景には前述のRE100需要の高まりや、市場で再エネ電力クレジットが他の種類よりも優先的に買われていることがあります。特に2024年4月には、後述するバイオマス由来分との区分見直し(細分化)が行われ、純粋な再エネ電力のみの区分となったことで価格が一段と安定・上昇したと考えられます。結果として、再エネ(電力)クレジットは6種類の中で最も高値圏にあり、再エネ利用をアピールしたい企業に支持されていると言えるでしょう。再生可能エネルギー(熱)J-クレジット「再エネ(熱)」のJ-クレジットは、太陽熱利用や地熱、バイオマスボイラーなど再生可能エネルギーによる熱利用で化石燃料の使用を削減したケースに発行されるクレジットです。要するに、再生可能エネルギーでお湯を沸かしたり蒸気を作ったりしてCO2削減した分ですね。電力と比べると企業の使い道はやや限定的ですが、工場などで熱エネルギーを大量に使う事業者には価値があります。ただし国際的なイニシアティブ(例:RE100)では熱の利用は報告対象外になることもあり、電力ほどには需要が高くありません。そのため取引価格も電力由来より低めに推移しています。それでも東証市場のデータでは、2022年頃の価格は約1,992円/トンCO₂と算定されていました。その後、現在は3,700円/トンCO₂前後となっており、上昇してきています。これは、市場区分の明確化(電力と熱の分離)や国内企業のカーボンオフセット需要の増加によって、再エネ熱クレジットへの関心も少しずつ高まったためと考えられます。とはいえ価格水準自体は電力由来の半分程度です。モバイルアプリカーボンクレジット取引所はこちら再生可能エネルギー(バイオマス)J-クレジット「再エネ(バイオマス)」のJ-クレジットは、生物資源(バイオマス)、特に木質バイオマスを燃料として利用することでCO2排出を削減したケースに発行されます。たとえば木材チップを燃やして発電したり、化石燃料の代わりに木質ペレットで熱を生み出したりするプロジェクトです。バイオマスは再生可能エネルギーですが、同じ1トンCO₂削減でも得られるエネルギー量が太陽光・風力より少ない傾向があるため、一部の報告用途では敬遠されがちです(例えば再エネ電力〇MWh相当と換算した場合に、バイオマス由来クレジットは電力由来クレジットより発電量換算で見劣りするといった背景があります)。その結果、市場では電力系クレジットと混在して取引されていた当初、バイオマス由来分は価格が伸び悩み低下傾向にありました。東証では2024年4月から再エネ電力区分を**「非バイオマス」と「木質バイオマス」に細分化する対応を行っています。これにより、バイオマス由来クレジットは独自のカテゴリーで売買されるようになりました。過去の実証段階でのバイオマス由来クレジット価格は約1,756円/トンCO₂と最も低い水準でした。区分独立後、現在の取引価格は約4,000円/トンCO₂と上昇しています。それでも再エネ(電力)には及ばず、再エネ系では安値圏です。バイオマス由来クレジットは製紙会社など木質バイオマスを活用する企業が創出・売却しており、購入する側も「木に由来する再エネで地域貢献したい」といったニーズで選ぶケースがあるようです。一方で国際認証や電力の見做し調達には使いにくい**ため、全体の需要は限られ、価格も控えめになっていると思われます。省エネルギー(省エネ)J-クレジット「省エネ」のJ-クレジットは、工場・ビル・家庭での省エネルギー設備の導入や運用改善によってエネルギー消費を削減し、結果的にCO2排出を減らした分をクレジット化したものです。例えば、高効率な空調や照明への交換、産業プロセスの効率化などが代表的なプロジェクトです。省エネは多くの企業・自治体で取り組みやすいためクレジット供給量も多く、価格は比較的安価です。実際、省エネ由来クレジットの価格は長らく1トンあたり1,500円前後で推移してきました。しかし、現在は1,815円/トンCO₂程度となっています。ゆるやかではありますが徐々に値上がりしております。これはカーボンニュートラルに向けた企業の自主的なオフセット需要が増え、安価な省エネクレジットから購入して排出量報告に充当する企業が増加したことが背景にあるでしょう。それでも価格水準は他カテゴリより低く、最も手頃に購入できるクレジットであることに変わりありません。大量のCO2排出を手っ取り早く埋め合わせたい場合、まず省エネクレジットが候補に挙がるのもうなずけますね。モバイルアプリカーボンクレジット取引所はこちら森林(吸収)J-クレジット「森林」のJ-クレジットは、森林の整備や保全、植林などによって大気中のCO2を吸収(炭素吸収源化)した量をクレジット化したものです。排出削減ではなく吸収・除去系のクレジットであり、「カーボン・リムーバル」として位置づけられます。森林由来クレジットは環境価値が高く評価されやすいため、供給量が限られる中で価格が高めになる傾向がありました。実証市場の段階では、森林クレジットの取引量がごく僅かだったこともあって平均約14,571円/トンCO₂という非常に高い値がついていました。しかしその後、市場における供給が増え需要とのバランスが取れてくるにつれ、価格は大きく下落しています。2023年末時点で森林クレジットは約8,095円/トンCO₂まで下がり、現在では6,500円/トンCO₂前後とさらに落ち着きました。昨年と一昨年を比較すると半額以下の価格下落となり、大幅な調整と言えます。価格が下がった背景には、まず**「他の安価なクレジットで代替しやすい」という事情があります。企業がカーボンオフセット目的でクレジットを買う場合、必ずしも高価な森林クレジットである必要はなく、省エネや再エネ由来のクレジットで足りてしまうケースが多いのです。そのため、森林クレジットは売れ残りやすく価格競争力を欠き、供給増に伴って値崩れした面があります。また、政府保有分の売却やJ-VER(過去のクレジット制度)由来の森林クレジット在庫放出なども市場に出てきており、これも値下がり要因となったでしょう。一方で、森林クレジットは「脱炭素貢献を直接支援している」というイメージからCSR目的で購入する企業もあります。価格がこなれてきたことで、今後はカーボンニュートラル宣言企業が残余排出の埋め合わせに森林クレジットを選ぶ**場面も増えるかもしれません。環境価値の高さと価格のバランスがどのように推移するか注目です。モバイルアプリカーボンクレジット取引所はこちら農業 J-クレジット「農業」のJ-クレジットは、農業分野での工夫によって温室効果ガスの排出を削減・吸収した事例に発行されます。典型例は水田でのメタン発生抑制です。例えば、水田の中干し(いったん水を落とす乾燥期間)を延長することでメタン発酵を抑え、結果として温室効果ガス排出を減らした場合などが挙げられます。このように農業由来で創出されたJ-クレジットはまだ数が少なく、新しいカテゴリです。東証カーボンクレジット市場でも農業クレジットの取引実績はごくわずかです。実際、最近ようやく数トン規模の取引があった程度で、その成立価格は約3,000円/トンCO₂でした。昨年・一昨年には市場での取引例がなく、過去価格のデータは「なし(N/A)」となります。しかしながら、食料品メーカーが原料生産に関わる農業由来クレジットを購入し始めるなど、少しずつ需要の芽も出てきています。自社のサプライチェーンに関連する削減プロジェクト(例えば自社と関係の深い産地の稲作由来クレジットなど)に価値を見出す企業もあり、農業クレジットは今後ユニークなポジションを築く可能性があります。価格は現状では再エネ電力より安い中間的な水準ですが、供給量が増えて市場が形成されれば上下に振れることも考えられます。農業分野特有のCSR的価値や地域貢献イメージも絡むため、今後の価格動向は注視したいところです。まとめ以上、東証のカーボンクレジット市場データをもとにJ-クレジット6種類の特徴と価格動向をまとめました。それぞれのクレジットには*「何由来か」*というストーリーがあり、価格にもその人気度合いや使い勝手が反映されています。投資や利用を検討する際は、単に安い高いだけでなく「どのような削減・吸収プロジェクトなのか」「自分たちの目的に合致しているか」を考えることが大切です。カーボンクレジット市場はまだ発展途上ですが、今後さらに取引が活発化し、新たな種類のクレジットも登場してくるでしょう。脱炭素社会に向けた動きの中で、J-クレジット市場の成熟と価格の推移を引き続き見守っていきたいですね。モバイルアプリカーボンクレジット取引所はこちら