2020年の日本政府の「2050年カーボンニュートラル宣言」からもわかるように、現在世界各国がカーボンニュートラルに向けて舵を切り始めており、脱炭素社会への流れは不可逆のものになりつつあります。こうした中で、多くの日本企業もカーボンニュートラルへの取り組みを最重要アジェンダの一つとして位置づけ、各種国際イニシアティブへの対応、GHG排出量の可視化・削減施策の検討を進めています。こうした急激なビジネス環境の変化を成長機会と捉えることもできますが、そのチャンスを得るにはGX(グリーントランスフォーメーション)に知見を持った人材の育成が必要不可欠となっています。この記事ではGXを担う人材の動向を調査しました。地方公共団体及び企業ではGX人材の不足が深刻内閣府の経済財政白書によると脱炭素に向けた取組を進めるうえで最も影響が大きい課題として、必要なノウハウ・人員が不足している」が38.2%と全体の4割弱を占める結果となっています。GX求人は6年で5.87倍まで急伸「リクルートエージェント」が2023年に公表したデータの推移をみると、2016年度を1とした場合、2022年度時点で5.87倍と大きく伸びが見られました。特に2020年度からの伸びが顕著であり、政府のカーボンニュートラル宣言が大きく影響していることが見て取れます。一方で実際の転職者も伸びてはいるものの、3.09倍と求人の増加に対して伸び幅が小さい結果となっています。リクルートは「企業が求めるスキルを全て備えている方は市場には少ない。だからこそ、活躍の可能性のある方・素養のある方を採用し事業を推進していく覚悟が必要だ。GXに関連するポジションは、民間企業出身ではない国際NGO・NPOや国際機関出身者が活躍している事例もある」とコメントしています。業界別のGX求人の推移を見てみると採用に積極的なのが「化学業界メーカー」(8.65倍)、「IT通信業界」(8.04倍)、「サービス・アウトソーシング業界」(6.52倍)、「電気・電子・機械業界メーカー」(5.87倍)という順になっています。リクルートは、「特に採用に意欲的なのは、エネルギー(化学、公共インフラ・官公庁含む)、電機、ITなどの業界で、GX求人の業界別の伸びをみてもその傾向は顕著だ。専門の新部署を立ち上げるのではなく、既存のコーポレート部門や事業部門に担当者を置くケースも増えている」としていています。2024年以降、今後の見通しカーボンニュートラルから始まった環境対策の動向は、2022年頃からサーキュラーエコノミー(CE)関連の求人増加にシフトしています。特にケミカルリサイクル、ライフサイクルアセスメント(LCA)、カーボンプライシング関連の求人が増え、カーボンクレジットや排出量取引などのキーワードが注目されています。生物多様性の取り組みに関する相談も増えており、これらの課題には単独の企業ではなく、業界内外の大きな連携が必要であるとされています。社内外の横断プロジェクトを推進できる人材へのニーズが高まっており、外部採用に加え、社内異動によるプロジェクト進行の促進が考えられています。また、GXプロジェクトにおける長期的な取り組みには、多面的な評価基準とモチベーション向上施策が求められており、外部と内部の労働市場の両方に対応することが喫緊の課題となっています。