今回はR&Dをテーマに、前半はR&Dの説明、後半はGXに関連するR&Dについて解説します。R&Dとは?R&Dとは、Research(研究)とDevelopment(開発)のそれぞれのアルファベットの頭文字をとったもので、研究開発のことを指します。研究開発は、自社の事業に関連する技術を開発することで、新しい商品やサービスを生み出します。企業が他社との差別化を図り、競争力を高めるためには重要な活動の一つです。メリット新商品の開発自社で新たな技術を開発できれば、他社との差別化ができます。新しい商品やサービスを開展開することは企業にとって非常に強みとなります。R&Dによって新技術を得た企業は、次なる市場を開拓することができます。自社にしかない技術を駆使して開発した製品・サービスが市場に受け入れられれば、将来的に大きな利益を生み出す可能性を秘めています。知見・技術の蓄積R&Dはすぐに結果が表れるものではありませんが、継続していくことによって自社内に知見や技術を蓄積することができます。蓄えた知見や技術を生かして、来るべきビジネスチャンスに備えることができます。製品開発の迅速化R&Dを行うことで、製品開発のスピードを速めることができるといった点もあります。知識や技術を持った専門の人材が集まり、知的財産を積み上げていくことができるので、結果として製品開発までのスピードを速められることにつながります。デメリットコスト新たにR&Dを行う場合、初期投資や基礎研究にかかる費用や時間は膨大です。初期段階だけでなく継続していくうえでもコストはかかるので、結果が得られず利益につなげることができなければ損失も大きくなります。技術を模倣される懸念時間やコスト、人材を投入して開発した技術や製品でも、他社に模倣されてしまう恐れがあります。そうなると、R&Dに投資した分のコストを回収できず、競争力や差別化といった目的も果たされなくなってしまいます。情報漏洩といったリスクの対策は十分に行っていく必要があります。人材確保が容易ではない前提として、R&Dに取り組めるほどの専門知識や技術を持っている優秀な人材自体、そう多くはないという点です。そのため、恒常的に人材は不足している状態にあります。また、確保した人材を定着させることも重要となります。研究開発を行う者が集中して取り組めるように条件面や労働環境を整備していく必要があります。R&Dの企業事例パナソニックホールディングスパナソニックでは、グループ全体の長期ビジョンとして、化石燃料からクリーンエネルギーへの転換を掲げています。GXの領域においては、カーボンニュートラル・サーキュラーエコノミー・ネイチャーポジティブの3つを軸としてR&Dを推進しています。■カーボンニュートラル ペロブスカイト太陽電池パナソニックが開発するペロブスカイト太陽電池は、ガラス基板に発電層を直接インクジェット塗布して実現する次世代型のソーラーパネルです。従来のシリコン系の太陽電池と同等の発電効率を持ちながら、実用サイズのモジュール(>800 cm2)として世界最高レベルの発電効率を達成しています。従来のシリコン素材のソーラーパネルよりも製造工程が単純なため、設計自由度が高く、「発電するガラス」としてさまざまな建築物への利用が期待されています。これまで設置が難しかった建物のガラス部にも設置できるため、現在、実証実験が実施されています。■サーキュラーエコノミー Kinari(キナリ)バイオプラスチック素材のkinariは、従来の石油由来のプラスチックを可能な限り植物由来のセルロースに置き換えることができます。植物由来のセルロースは、コーヒーかすや間伐材など、さまざまな廃材から抽出したものを活用できます。また、従来のプラスチックよりも丈夫かつ軽量に成形することが可能で、仕上がりの自由度も高く、サーキュラーエコノミーで主力となる可能性を持っています。■ネイチャーポジティブバイオCO2変換バイオCO2変換は、大気中のCO2を用いて、光合成微生物の一種(シアノバクテリア)から農作物の成長を刺激・補助する成分を生成・抽出します。追加の化学肥料・農薬に頼ることなく収穫を安定的に向上させられる技術として、CO2活用と持続可能な食糧生産への貢献が期待されています。現在は大量生産に向けて研究開発を進めています。https://news.panasonic.com/jp/stories/15406まとめ企業が実施するR&Dは、時に社会を変えるような大きな成果を生み出します。私たちが現在の暮らしで普段何気なく利用している製品やサービスも、研究開発によって生み出された成果の数々です。大規模なR&Dを実施するには、コスト、時間、人材などの余力がある企業に限られます。そのため、R&Dを実施している企業は全体の一部にすぎません。しかしながら、R&Dとは呼ぶほどではなくても、全ての企業が日々新たな取り組みを行っています。その一つ一つがこれからの社会により良い変化をもたらしていくことを期待せずにはいられません。