グリーンITとは?-- 携帯電話、ChatGPT、パソコンビジネス、日常生活といった誰もが関係しているあらゆるシーンで、IT技術を用いたツールが浸透していますが、グリーンITという言葉に聞きなじみのある読者はそれほど多くはないと思います。本書では、グリーンITという概念と、その必要性について説明します。-- 2050年カーボンニュートラル宣言日本政府は2020年10月に開かれた臨時国会で、経済成長戦略の主要な柱として環境と経済の相互利益を推進し、2050年までに国内の温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「2050年カーボンニュートラル」への挑戦を発表しました。これは、脱炭素社会を目指す日本の決意を示すもので、それと同時に、政府がヒトとお金をつぎ込み、企業や個人の行動変容を巻き起こしていくことの始まりを意味しています。グリーン of ITについて【グリーン of IT】-- グリーン of ITとは、グリーンITの中でもIT機器自体を省エネ・再エネ化する取組となります。なかでも、一番効果が出やすいと言われているのがデータセンターのクラウド移行となります(※DCを持つような企業に限られますが)。Amazon,Microsoft,Googleといったトップシェアを誇るハイパースケーラーが持つクラウドサービス用のデータセンターでは、100%再エネに近い電力を活用してサーバーなどを動かしています。その他にも、利用するプログラム言語によるメモリの消費量削減や、エコフォントと呼ばれる印刷時のインク使用量を削減するといった意外な部分にもグリーン of ITの手法は様々なものが存在します。システムをクラウド事業者のデータセンターに移行するとどれくらい省エネになるの?本書では、果たしてクラウド移行に伴い一体どれくらい省エネできるのか?について簡単に紹介しようと思います。現在日本のクラウド事業者で大きなシェアを誇るのはAWS, MS Azure, GoogleCloudの3つです。クラウドを利用するユーザーは、この3サービスが提供するデータセンター上のICT機器や、冷却器を借りるわけなのですが、これらの機器が各企業が自前で用意する、いわばBAUのシステムに比べてどれだけ省エネになるのかがポイントとなる。さて、これらのクラウド事業者のうち、Google Cloudは100%再エネ電力を活用しており、AWSとMS Azureは2025年までに100%再エネ化を達成すると宣言している。それだけでなく、クラウド事業者が提供するデータセンターでは、サーバーからプロセッサに至るまできわめて最新の機器が設備導入されているため、エネルギー自体の使用効率が高いという点にも注目です。こうしたクラウド事業者の努力もあり、S&P グローバル・マーケット・インテリジェンス傘下の調査会社である 451 Research に委託した本レポートによると、日本の企業や公共機関がオンプレミス(自社所有)のデータセンターからクラウドへワークロード(IT 関連業務)を移行することで、エネルギー消費量とそれに付随する二酸化炭素(CO2)排出量を 77% 削減することが可能であることが明らかになっています。BIGLOBE株式会社では9カ月で583メガトンのCO2排出量削減を実現BIGLOBE株式会社の事例では、システムをAWSに移行したことで、2022年1月から同年9月の間で583メガトンものCO2排出量の削減につながったという。AWSの最適な活用で省エネに。BIGLOBEが目指すデジタルインフラのあり方とは。よりhttps://ashita.biglobe.co.jp/entry/2023/02/28/110000サステナビリティ・ESG関連の報告に良い影響があるクラウドを利用することで単に省エネになるだけではなく、サステナビリティ活動の報告・発信にも好影響があります。昨今TCFD(IFRS S1/S2へ統合)のような気候変動や環境に関する取組や事業内容の開示について大手企業を中心に義務化が進んでおり、またESG投資が機関投資家の間でより強固なトレンドになってきています。特に、GHGプロトコルという基準の中でScope1,2,3(自社の事業活動に係る間接的な電力・熱等のエネルギー消費を対象)のGHG排出量を開示する必要があり、オンプレ・クラウド上のシステムも例外ではありません。そういった背景から、まずは自社システムに関するGHG排出量を知ることが第一に必要となり、次にその量を削減することも重要視されます。これまで主なクラウド移行の動機は内発的にコスト削減・調達リードタイム縮小などが大きかったが、今後はESG投資側からの圧力をはじめ外的要因も考えなくてはならなくなってくるでしょう。