こんにちは!サステナ編集部です!突然ですが、みなさんは3月5日が「安藤百福の日」ってご存じでしたか。世界初のインスタントラーメン「チキンラーメン」や、世界初のカップめん「カップヌードル」などを発明し、「インスタントラーメンの父」と呼ばれる安藤百福さん。実は、彼の誕生日である3月5日にちなんで、「安藤百福の日」と制定されているんです。今回は、その3月5日の「安藤百福の日」にあわせて、みなさん大好き(ですよね?)なインスタントラーメンについて、サステナの視点も交えながらまとめてみたいと思います。インスタントラーメンの歴史と安藤百福の偉業まずは、インスタントラーメンの歴史をざっくり見ていきましょう。1958年(昭和33年)に誕生した世界初のインスタントラーメンが「チキンラーメン」。開発者は日清食品の創業者である安藤百福さんです。戦後の日本は大変な食糧難で、アメリカから支援された小麦粉を使ってパンを食べることが推奨されていましたが、「日本人はやっぱり麺が好きなのに、パンしか手段がないなんておかしい」と安藤さんは思ったそうです。そこで、自宅の小さな研究小屋で日夜実験を重ね、「お湯をかけるだけですぐ食べられる麺」を作ろうと奮闘しました。乾燥方法はどうする?味はどうしよう?そんな試行錯誤の末に、油で麺を揚げて余分な水分を飛ばす方法(瞬間油熱乾燥法)を思いつき、そこから「チキンラーメン」が完成したのです。「チキンラーメン」の成功を受け、1971年(昭和46年)に登場したのが「カップヌードル」。これは世界初のカップめんで、容器にそのまま麺をセットしてお湯を注ぎ、フタをして数分待つだけで食べられるという画期的な商品でした。発売当初の価格は1食35円と、当時としては高価でしたが(生うどん1玉6円の時代)、便利さと美味しさから次第に人気が拡大していきます。海外ではどんぶりがあまり馴染みのないところもあるため、カップがそのまま食器として使えるのは大変便利でしたし、食文化の違いを考慮したフォークが付属されたのもポイントでした。こうして、日本生まれのインスタントラーメンは世界中に広がっていったわけです。このような偉大な発明を成し遂げた安藤百福さんは、後に「インスタントラーメンの父」と呼ばれるようになりました。「チキンラーメン」は2023年現在も発売当初とほぼ変わらないパッケージで並んでおり、歴史を感じさせてくれます。でも、実際食べると今でも「意外とおいしい」と驚く人も少なくないんですよ。世界で愛されるインスタントラーメンと消費データインスタントラーメンは日本だけでなく、世界中でも超有名であり、今や年間消費量は1000億食を超えるとも言われています。世界ラーメン協会(WINA)のデータによると、2022年度はなんと年間1218億食。つまり、世界のどこかで1年間に1000億以上のインスタントラーメンが食べられている計算になります。国別の消費量トップは中国(香港含む)、続いてインドネシア、インド、ベトナムなどアジア圏がやはり強いです。日本は年間60億食前後で、アジア勢の中でも上位に入っています。また、一人当たりの消費量を見てみると、韓国がダントツのトップで1人あたり年間70食を超えるなんてデータも。週に1回以上はインスタントラーメンを食べている計算になりますね。ちなみに、日本のメーカーは海外向けの味付けもかなりバリエーション豊富。東南アジア向けにはミーゴレン風、欧米向けにはチリビーンズ味やトマト風味など、各国の好みに合わせて開発されています。カップ麺に関しては、コンビニやスーパーで見ない日はありませんし、私たちの生活に欠かせない存在ですよね。インスタントラーメンと環境問題便利で美味しいインスタントラーメンですが、その大量生産・大量消費は環境への影響も無視できません。まず指摘されるのがプラスチックごみ問題です。カップ麺の容器やフタ、個包装の多くはプラスチック製で、一度に食べ切りの商品のため廃棄物が多く出ます。容器は食べ終わった後に油分が付着してリサイクルが難しい場合も多く、焼却処分されることが一般的です。実際、日清食品では焼却されるごみから発電された電気を本社オフィスで利用する取り組みを始めていますが、その背景には「食べ終わったカップ麺容器は油汚れでリサイクルしづらい」という課題があります。またプラスチック容器が不適切に廃棄されれば環境中に残留し、海洋プラスチック問題につながる恐れもあります。こうした課題に対応するため、メーカー各社も容器包装の改良を進めています。例えば日清食品は2021年、「カップヌードル」のフタに付けていた小さなプラスチックのフタ止めシールを廃止しました。この工夫だけで年間41トンものプラスチック削減につながったといいます。さらにカップ容器そのものも環境配慮型に切り替えが進んでいます。2008年には紙を主原料とした「ECOカップ」が登場し、2019年からは植物由来のバイオマスプラスチックを一部使用した「バイオマスECOカップ」へ順次移行しました。この新容器では従来比で容器1個あたり石油由来プラスチック使用量を半分に削減し、焼却時のCO2排出量も約16%減らすことができるとされています。容器の軽量化も進められており、ある即席麺メーカーではどんぶり型カップ麺の容器を薄くすることで年間約49トンのプラスチックを削減した事例もあります(※日清食品「どん兵衛」シリーズの容器軽量化による)。製造工程におけるエネルギー消費やCO2排出もインスタントラーメンの環境負荷として注目されています。インスタント麺を「瞬間油熱乾燥」させるためには大量の油で揚げる工程が必要ですが、実はこのとき主に使われる油はパーム油です。パーム油の生産は熱帯雨林の大規模な開墾につながることが多く、マレーシアやインドネシアでは2005〜2010年の間にパーム農園拡大の約36%が森林破壊によって賄われたとの報告があります。森林を切り開くことで貴重な野生生物の生息地が失われるだけでなく、森林に蓄積された二酸化炭素が放出されて地球温暖化にも拍車をかけます。インスタントラーメンの需要増加は間接的にこうしたパーム油需要を支えている面があり、「ラーメンをすすることが森林破壊につながっていないか?」といった指摘もなされています。また製造時のエネルギー消費や物流も含めると、インスタントラーメン産業全体でのCO2排出量は無視できない規模になります。日清食品グループでは、2030年までに事業全体のCO2排出量を2020年比で42%削減する目標を掲げ、再生可能エネルギーの活用や省エネ設備投資を進めています。さらに食品業界全体での食品ロス削減にも取り組んでおり、世界的な「10x20x30食品廃棄削減イニシアチブ」に参加してサプライチェーン上のフードロス半減を目指すなどの活動も行われています。こうした環境課題に対応するため、企業側もサステナビリティへの取り組みを加速させています。例えば日清食品では即席麺業界で国内初となる「RSPO認証パーム油」の導入を進め、2020年2月から「カップヌードル」を製造する全工場で持続可能な認証済みパーム油のみを使用開始しました。RSPO認証パーム油とは、森林破壊防止や人権に配慮して生産されたパーム油のことで、これに切り替えることでインスタントラーメン製造による環境・社会負荷の低減に寄与しようとするものです。他社でも原材料の持続可能な調達や工場排水のリサイクルなど様々な取り組みが行われており、業界全体で「地球にやさしいラーメン作り」に挑戦が続けられています。未来のインスタントラーメンインスタントラーメン業界は今、持続可能な未来に向けて大きく変わろうとしています。まずエコ包装の分野では、前述のバイオマスECOカップのように環境負荷を減らした容器への切り替えが代表的です。プラスチックに替えて紙製のカップやフタを採用した商品も増えつつあり、発泡スチロールなどの石油由来素材を極力使わない試みが進んでいます。例えば、あるメーカーでは容器の素材に植物由来プラスチックを使用することでプラスチック使用量を削減しつつ、断熱性や密封性といった機能は従来通り確保することに成功しています。また、包装フィルムに再生プラスチックを用いたり、外箱を森林認証紙に変更したりと、パッケージ全体でエコ素材への転換が図られています。今後はプラスチックに代わる新素材の開発や、容器のリユース(再利用)システム導入なども検討されており、インスタントラーメンの包装はますます「脱プラ」へとシフトしていくでしょう。次に麺やスープの次世代化です。昨今の健康志向や環境意識の高まりを受け、動物性原料に頼らない植物由来のインスタントラーメン開発が活発化しています。日清食品はフードテック企業と協業し、完全に植物性原材料だけで作った「プラントベースのカップヌードル」の開発を進めています。肉の代わりに大豆ミートを使った具材や、動物由来のエキスを使わず野菜や昆布などで旨味を出したスープなど、環境に配慮しつつ満足感のある味を実現しようという試みです。また、小麦粉の代替として豆類や雑穀を使ったグルテンフリー麺、健康志向に応える低糖質麺や高たんぱく麺の商品化も進んでおり、麺そのものの多様化も期待されています。さらに、将来的には培養肉や昆虫食由来のプロテインを活用した斬新なインスタントラーメンが登場する可能性も議論されています。例えば昆虫由来の出汁を使ったスープや、培養肉で作ったチャーシュー風具材など、SFのようなアイデアも現実味を帯びつつあります。これらはフードロスや食糧危機への対策としても注目される分野であり、インスタントラーメンが培ってきた技術との相性次第では、一気に普及する可能性を秘めています。最後に、消費者の意識変化と企業の取り組みについてです。近年、消費者の間でも環境や健康に配慮した商品を選ぶ動きが広がっています。「エコな商品なら多少高くても買いたい」「プラスチックごみが出ない容器のラーメンを選びたい」といった声に応えるべく、企業側も積極的に情報発信を行っています。商品のパッケージにリサイクルや環境対応のマークを表示したり、ウェブサイトで原材料の調達方針や環境データを公開したりする企業も増えました。「このカップは植物由来の素材を使用しています」「この製品は持続可能なパーム油を使用しています」といった訴求は、もはや珍しいものではありません。またSNS等で消費者の声を拾い上げ、新フレーバーの提案や容器デザイン改良に生かす動きも活発です。インスタントラーメンは長らく「安くて便利」さが最大の魅力でしたが、これからは「環境にやさしい」「体にやさしい」といった価値も求められる時代になってきました。業界各社もSDGs(持続可能な開発目標)を意識し、「環境負荷ゼロのインスタントラーメン開発」を掲げて研究開発に取り組んでいます。未来のインスタントラーメンは、私たちにこれまで以上のおいしさと手軽さを提供しつつ、地球環境とも調和した存在へと進化していくことでしょう。その姿はまさに、安藤百福さんが目指した「世の中を明るくする新しい食」の次なる形なのかもしれません。まとめただ便利なだけでなく、世界中の食文化に大きな変化をもたらし、今なお進化を続けているインスタントラーメン。その陰には大量の資源消費やCO2排出、プラスチック廃棄など、解決すべき問題も山積みです。でも、企業や研究者、そして私たち消費者の意識が少しずつ変わっていけば、「おいしい」「手軽」「環境にもやさしい」インスタントラーメンが当たり前になるかもしれません。今後の開発トレンドや技術革新、そして私たちの消費行動がどう変わるのか。インスタントラーメンは、これからも目が離せないジャンルです。日清食品グループの環境スコアをチェックしたい方は、GXリサーチも参考にしてみてください。参考世界ラーメン協会 (WINA): https://instantnoodles.org/農林水産省「食品ロスの現状と取組」: https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/日清食品グループ サステナビリティ: https://www.nissin.com/jp/sustainability/RSPO (Roundtable on Sustainable Palm Oil): https://rspo.org/