みなさんこんにちは!サステナ編集部です。今年もCOP(国連気候変動枠組条約締約国会議)の開催時期がやってきました。29回目となる今回は、11月11日(月)から11月22日(金)までアゼルバイジャンで開催されます。本記事では前回のCOP28を軽く振り返りつつ、COP29の焦点にスポットを当てていこうと思います。COPとは?「COP(気候変動枠組条約締約国会議)」とは、国連の加盟国が参加する気候変動に関する会議です。COPはConference of the Partiesの略であり、締約国会議を意味し、気候変動を意味するものではありませんが、一般的にCOPといったらこの気候変動に関する締約国会議を指します。その始まりは、1992年に採択されて94年に発効した「国連気候変動枠組条約(UNFCCC)」にあります。COPは、毎年11月から12月上旬頃に約2週間にわたって開催されています。具体的には、温室効果ガスの削減目標や政策、技術、資金の提供などについて議論されます。気候変動問題を解決すべく、現在約200の国・地域が締結・参加しています。COP29開催国アゼルバイジャン今年度の開催はアゼルバイジャンの首都バクーにあるオリンピックスタジアムで行われます。COPの開催は地域ごとに持ち回りとなっており、2024年は旧ソ連などの東欧での開催でしたが、ロシアがEU加盟国での開催に反対して調整が難航した結果、アゼルバイジャンでの開催に決まったという経緯があります。アゼルバイジャンは石油や天然ガスの豊富な資源国であり、その象徴ともいえる場所が「ヤナルダグ」です。首都バクーから北へ車で30分ほど行ったところにあるヤナルダグでは、地中から漏れたガスが自然発火し、数千年もの間燃え続けているという光景を目にすることができます。街には火をモチーフにした建造物や高層ビルもそびえ立ち、別名「火の国」とも呼ばれています。前回COP28のふりかえり昨年ドバイで開催されたCOP28の成果の要点をおさらいをしてみます。初のグローバルストックテイクで、世界全体の進捗を評価。「2035年までにGHG排出量を2019年比で60%削減が必要」化石燃料から2050年ネットゼロ達成の為のエネルギー転換への合意2030年までに世界の再エネ3倍、エネルギー効率2倍前回のCOP28では、主に脱化石燃料依存に焦点が当てられました。COP29の焦点今年のCOP29は、2025年以降の途上国への資金援助に関する議論がまとまるかが注目される「ファイナンスCOP」です。途上国支援資金先進国は、途上国の排出削減を支援するために支援資金を提供しています。2009年には、2020年までに年間1000億ドル(約15兆円)を途上国に支援することで合意していましたが、実際に達成されたのは2022年でした。COP29では、2025年以降に動員されるべき資金総額が決まります。国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)事務局の推定によると、途上国における2030年以前のNDC達成には5.8兆〜5.9兆ドルが必要とされています 。これまで多排出してきた先進国、現在成長に伴う排出をしている途上国、それぞれに思惑があり、世界全体の排出削減に向けて両者の納得のいく合意に期待が寄せられています。2035年の温室効果ガス削減目標(NDC)パリ協定においては、各国は5年ごとに以前の目標を上回るNDCを提出することとなっています。次回は2025年2月までに提出しなければなりません。ホスト国のアゼルバイジャンや次期ホスト国のブラジルなどの一部の国からは、昨年のCOP28で実施された世界全体での気候変動対策の進捗評価「グローバル・ストックテイク」の結果を踏まえた2035年温室効果ガス削減目標(NDC)が早くも発表される可能性があります。これらのNDCが野心的であれば、他国に対しても高いコミットを促すことができます。クレジット市場に関するルールを定めたパリ協定6条さらに、昨年結論が先延ばしとなった、クレジット市場に関するルールを定めたパリ協定6条の議論の行方も注目されています。パリ協定6条は国際的なクレジット市場のルールを決める条項で、6条は以下の3つの仕組みに分かれています。●2項 二国間クレジットなどの分散型の取引(協力的アプローチ)●4項 クリーン開発メカニズム(CDM)などの国連主導のカーボンメカニズム(国連管理型市場メカニズム)●8項 市場を介さない枠組み(非市場型アプローチ)このパリ協定6条を実施するための詳細なルールに関してはいまだ結論は出ていません。民間のボランタリークレジット市場は活況を呈していますが、パリ協定6条のクレジットは国連公認となるため、より価値が高くなります。。注目すべき点は3つあり、まず1つ目は政府の認可です。6条においてクレジットを各国のNDCの達成のために使うには、クレジットの創出プロジェクトに関与した各国政府による認可が必要ですが、政府がこの認可を取り消したり、撤回したりする能力について意見が大きく分かれています。簡単に撤回できてしまうと、クレジット市場における予測可能性や安定性に対して大きな懸念を引き起こすため、交渉事項としては高度な政治的判断が必要とされます。2つ目は、複数あるクレジットの登録簿について。2項における国際登録簿、4項の登録簿、さらに各国の登録簿などがあり、それぞれの役割をどう整理するかが問題となります。先進国側は国際的な登録簿はあくまでもクレジットの追跡や記録の役割で、クレジットそのものは国の登録簿など分散した場所で発行可能にするという分散型管理を主張している。一方、一部の途上国側は、国際的な登録簿がすべての機能を提供するといった中央管理型を支持しています。途上国が重視するのは、クレジット市場へのアクセスを容易にすることであり、そのためには中央管理型が好ましいというわけです 。3つ目は、特に日本企業からも関心の高い論点として、大気中から二酸化炭素を除去するDACや、いわゆる除去クレジットの扱いです。大気中の炭素を回収するDACや、森林を使って炭素を吸収する方法などがあります。2050年にGHGを実質ゼロにするためには、大気中から除去する技術は必ず必要となります。最後までどうしても残ってしまう部分に使用できる除去クレジットは、究極の高品質クレジットとみなされています。どういった除去クレジットを認めるかは、4項の一つとして議論が進んでいます。パリ協定会議の下に設置された監督機関が22年のCOP27に提言を出しましたが、結論は見送られました。さらに23年のCOP28においても、更新された提言に反対する国も多く、合意は先送りとなりました。もちろん、各国間で大きく意見の異なる論点は多く残っています。例えば、いったん大気中から除去した炭素が大気中に戻ってしまう「リバーサルリスク」もその一つです。単なる漏れや森林火災だけでなく、地震などの天災や、戦争といった人為起源のリスクも含まれるため容易ではありません。これらをどう防ぐか、漏れをチェックするモニタリングをどの程度続けるべきかを巡り対立があります。管理すべきホスト国の役割や、プロジェクトの現地の住民の人権侵害や環境破壊なども防ぐ仕組みが求められます。COP29に関するその他の情報不参加を表明した途上国太平洋の島国であるパプアニューギニアは、COP29への不参加を表明しました。参加を見送る決断をした理由として、これまで決定された資金支援といった途上国支援策などが十分に履行されていないためであるとしています。気候変動に起因するとみられる自然災害が頻発している国としては、直接的な支援を求めるのも無理はないですが、CO2を吸収する熱帯雨林を要する国の不参加表明は波紋を広げることになりそうです。石破首相、会合への参加見送り日本の石破首相は、COPの首脳級会合への出席を見送る方針です。開催中に国会日程が見込まれているため、現状を踏まえて国内対応を優先させるためとみられています。他には、大統領選直後のタイミングとなる米国のバイデン大統領、欧州連合のフォンデアライエン欧州委員長、中国、オーストラリア、メキシコの各首脳も欠席の見通しとなっています。まとめCOP29は、グローバルな気候政策の転換点として重要な会合です。途上国支援やクレジット市場のルール整備といった具体的な課題に加え、各国の削減目標がどのように更新され、実行可能な形で合意に至るかにも注目です。今後の温室効果ガス削減に向けて、資金配分や市場メカニズムの構築が不可欠であり、その成果によって脱炭素への道筋が決まってくるとも言えます。COP29の開催終了後には、その成果についてまたお伝えしていこうと思います。出典Yahoo!ニュース「首相、COP29の出席見送り 温暖化対策で存在感低下も」Reuters「COP29、バイデン氏ら主要国首脳が相次ぎ欠席へ」NIKKEI GX「途上国支援資金が焦点、民間負担も議論」NIKKEI GX「国連公認クレジット、ルール合意なるか」関連Sustainable Today「COP28が開幕! 会議の焦点はどこにあるのか」Sustainable Today「COP28閉幕、振り返り。」