GHG(温室効果ガス)排出量における「スコープ3」は、企業活動に伴う間接的な排出源を指します。これには、原材料の調達や製品の最終消費に至るまでの輸送が含まれます。輸送は、GHG排出量の大きな要因の一つであり、特に物流依存度の高い産業においては重要な課題です。日本では、温室効果ガス排出量削減のための法的枠組みとして、温室効果ガス排出量削減促進法(温対法)と省エネ法(エネルギーの使用の合理化に関する法律)が設けられています。これらの法律は、スコープ3の排出量削減、特に輸送に関する取り組みにどのように関わっているのでしょうか。スコープ3(輸送)と温対法の関係算定・報告・公表制度の対象者【省エネ法】省エネ法の対象となるのは、一定規模以上の(原油換算で1,500㎘/年以上のエネルギーを使用する)事業者です。https://www.enecho.meti.go.jp/category/savingandnew/saving/enterprise/overview/【温対法】算定・報告・公表制度の対象者GHG種類区分対象となる企業の基準エネルギー起源CO2【特定事業所排出者】全ての事業所のエネルギー使用量合計が原油換算1,500kl/年以上の事業者【下記が対象】・省エネ法による特定事業者・省エネ法による特定連鎖化事業者・省エネ法による認定管理統括事業者又は管理関係事業者のいずれかであって、かつ、全ての事業所のエネルギー使用量合計が1,500kl/年以上の事業者・上記以外の事業者であって、かつ、全ての事業所のエネルギー使用量合計が1,500kl/年以上の事業者【特定輸送排出者】・省エネ法による特定貨物輸送事業者・省エネ法による特定旅客輸送事業者・省エネ法による特定航空輸送事業者・省エネ法による特定荷主省エネ法による認定管理統括荷主又は管理関係荷主のいずれかであって、かつ、貨物輸送事業者に輸送させる貨物輸送量が3,000万トンキロ/年以上の荷主・省エネ法による認定管理統括貨客輸送事業者又は管理関係貨客輸送事業者のいずれかであって、かつ、輸送能力の合計が300両以上の貨客輸送事業者非エネルギー起源CO2【特定事業所排出者】原油換算で年間1,500kl以上のエネルギーを消費する事業所メタン【特定事業所排出者】・温室効果ガスの種類ごとに定める当該温室効果ガスの排出を伴う活動(排出活動)が行われ、かつ、当該排出活動に伴う排出量の合計量が当該温室効果ガスの種類ごとにCO2換算で3,000トン以上・事業者全体で常時使用する従業員※6の数が21人以上一酸化二窒素上に同じ上に同じハイドロフルオロカーボン類上に同じ上に同じパーフルオロカーボン類上に同じ上に同じ六ふっ化硫黄上に同じ上に同じ三ふっ化窒素上に同じ上に同じ温対法と省エネ法の概要温対法は、日本の温室効果ガス排出量削減目標の達成を目指し、企業や地方公共団体に排出量削減の取り組みを義務付ける法律です。この法律は、排出量の報告や削減目標の設定、削減計画の策定を義務づけています。省エネ法は、エネルギーの使用の合理化を促進することを目的とし、産業界や運輸業界におけるエネルギー消費効率の向上を求めています。この法律は、エネルギー消費量の大きい事業者に対し、エネルギー管理の徹底や省エネルギー計画の策定を義務付けるものです。スコープ3排出量と輸送スコープ3の排出量は、企業が直接的に管理・制御する範囲外の活動から生じるGHG排出を指します。輸送におけるスコープ3の排出量には、製品の原材料調達から最終消費者への配送まで、さまざまな段階での物流活動が含まれます。これらの活動は、企業の直接的な管理下にはなく、サプライチェーン全体を通じた協力が排出量削減の鍵となります。輸送における排出量削減の取り組み企業は、スコープ3の排出量削減に向けて、輸送プロセスの効率化や低炭素技術への転換、サプライチェーン全体の最適化を図る必要があります。これには、物流のルート最適化、輸送手段の選択(例えば、トラック輸送から鉄道輸送へのシフト)、エコドライブの推進、輸送用機器の燃費向上などが含まれます。温対法と省エネ法による支援と規制温対法と省エネ法は、輸送におけるGHG排出量削減を支援するた援するための枠組みを提供します。これらの法律は、企業が輸送に関する排出量を管理し、削減するための指針となるとともに、エネルギー効率の向上を促進します。温対法による排出量削減の推進温対法では、企業に対して温室効果ガスの排出量を報告すること、および排出量削減目標を設定し、これを達成するための具体的な計画を策定することが求められます。輸送に関連するスコープ3排出量も、企業の温室効果ガス削減計画の一環として取り組むべき項目です。企業は、サプライチェーンを通じて輸送プロセスの効率化や低炭素化を図ることで、スコープ3の排出量削減に貢献できます。省エネ法によるエネルギー効率の向上省エネ法は、特にエネルギー消費量が大きい運輸業界において、エネルギー使用の合理化を促進します。輸送業者は、省エネルギー計画を策定し、エネルギー管理者を設置することが求められています。この計画には、輸送手段の見直し、ルート最適化、燃費の良い車両への更新など、輸送に関するエネルギー消費効率を高める取り組みが含まれるべきです。これらの取り組みは、直接的なエネルギー消費量の削減だけでなく、間接的な温室効果ガス排出量の削減にも繋がります。まとめスコープ3における輸送は、企業が直接的にコントロールできない範囲でのGHG排出量削減における大きな課題です。しかし、温対法と省エネ法は、企業に対してこの課題に取り組むための枠組みを提供し、排出量削減のための具体的な行動を促します。企業はこれらの法律に従いながら、サプライチェーン全体を通じた効率化と低炭素化を目指すことが重要です。輸送におけるGHG排出量の削減は、気候変動対策の重要な要素であり、持続可能な社会への移行を加速するために不可欠な取り組みです。この記事では、温対法と省エネ法が輸送に関連するスコープ3の排出量削減にどのように貢献しているかを概観しました。これらの法律は、企業が環境への影響を減らし、エネルギー効率を高めるための指針となります。最終的には、これらの取り組みが、より持続可能な経済と社会の構築に寄与することが期待されています。