スコープとは?温室効果ガスの排出量を測定する範囲のことです。スコープの概念は温室効果ガス算定・報告において、最も広く認知・指示されている国際基準である「GHGプロトコル」にて定義されており、温室効果ガスの排出量を範囲ごとに算出するための分類です。スコープは以下の3つに分類されています。・自社の直接的排出 (スコープ1)・自社の間接的排出 (スコープ2)・サプライチェーン上流・下流 (スコープ3)*サプライチェーン…製品の原材料・部品の調達から販売に至るまでの一連の流れ今回はこのうちのスコープ1についての説明と算定方法をお伝えしていくとともに、自社のデータを使って実際に算定していきます。スコープ1について■自社の直接的な排出スコープ1は事業者自らが直接的に排出する温室効果ガスのことです。大きく分けると以下の2つに大別できます。■スコープ1に該当する具体的事例スコープ1の算定方法について■算定対象・範囲スコープ1は、自社だけでなく連結対象の子会社や建設現場など、自社が所有または支配している全ての事業活動を算定する必要があります。連結の範囲は、出資比率基準と支配力基準のいずれかによって設定します。出資比率基準だとやや複雑であるため、環境省は支配力基準を推奨しています。CDPの質問書でも報告範囲を問われます。■算定式スコープ1の算定では、環境省の「温室効果ガス排出量算定・報告マニュアル」を参照します。基本的には以下の算定式によって、温室効果ガスの排出量を算出することができます。排出係数は上記のマニュアルに記載されています。温室効果ガス排出量=活動量*× 排出係数(単位使用量当たりの発熱量 × 単位発熱量当たりの炭素排出量 × 44/12) *活動量…排出活動における電気の使用量、アルミニウムの生産量、廃棄物の処理量など。仮に1Lのガソリンを使用した場合の排出量を算定するため、上記の算定式に数値を当てはめてみると、1L× 34.6(GJ/kl) × 0.0183(tC/GJ) × 44/12(CO₂重量比) = 2.32 (kg-CO₂/l)となります。結果の単位はトンではなくキロで表しています。※単位をそろえることに注意(1000l=1kl、1000kg=1t)スコープ1算定のための手順■ステップ1:算定に必要なデータを集める燃料の種類ごとの活動量を把握する(都市ガスの使用量、社用車のガソリンなど)■ステップ2:排出原単位データベースに基づいて、温室効果ガスの排出量を算定する算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧を元に排出量を算定する。■ステップ3:算出した排出量をCO₂に換算する(算定した温室効果ガスがCO₂以外の場合)地球温暖化係数をもとに、CO₂以外の温室効果ガスをCO₂に換算する。スコープ1を算定する弊社、日本GXグループ株式会社のデータを参照してスコープ1を算定します。事業内容は主にカーボン・クレジット取引やGXコンサルティングなどを行っているため、自社で使用する燃料としては都市ガスのみとなっています。対象となる排出活動燃料の使用(都市ガス)主な事業内容・カーボンクレジット流通事業 ・GXコンサルティング事業・GX総合研究所事業自社工場・業務用車両なし従業員数25名(役員・正社員・業務委託)算定する期間は2023年9~12月分、使用量は89m³。ちなみに、ガスの単位にはm³(リューベ)とNm³(ノルマルリューベ)が用いられます。この2つの違いは基準となる空気の状態にあります。空気量が圧力や温度、湿度に左右されない実量を示すNm³を用いて計算していきます。都市ガスの使用量の単位をNm³に換算する(小規模設備に供給される低圧用の係数0.967をかける)と、86.063Nm³。都市ガスの各係数は、単位発熱量44.8(GJ/1,000Nm³)、炭素排出量0.0136(tC/GJ)これを計算式にあてはめると、86.063Nm³ × 44.8(GJ/1,000Nm³) × 0.0136(tC/GJ) × 44/12(CO₂重量比) =192.27(kg-CO₂/Nm³) となります。まとめ環境負荷を度外視した経営ではステークホルダーから目を背けられてしまうほど、昨今の企業を取り巻く環境はどれだけサステナビリティを意識しているか、経営の中心に据えているかを求められています。まだ情報開示を検討していない企業であっても、自社の活動がどの程度温室効果ガスを排出しているのかを把握しておくことは決して無駄なことではありません。当記事ではCDPの回答やTCFDの開示を進めていくうえで避けては通れない温室効果ガスの排出における、スコープとはどういったものなのかという大まかな概念から、スコープ1の算定方法までを簡単に解説してきました。スコープ算定では一般的に1と2が自社の範囲なのでまとめて算定に取り掛かかりますが、できるところからこなしていくという意味で今回はスコープ1の算定のみに限定しています。これからスコープの算定を始めようと思ってはいるけれど、何をどうしたらよいのか全く分からないという方に、多少なりとも参考にしていただけたら幸いです。今後はスコープ2、スコープ3についても解説していきたいと思います。最後までご覧いただきありがとうございました。